NECの矢野薫代表取締役執行役員社長(左)と松下電器産業の大坪文雄代表取締役社長(右)
NECの矢野薫代表取締役執行役員社長(左)と松下電器産業の大坪文雄代表取締役社長(右)
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 NEC,松下電器産業,パナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)は7月27日,携帯電話端末の開発を受託する合弁会社を設立して,ハードウエアやソフトウエアの一部を共通化すると発表した(関連記事)。社名は未定。

 新会社には,両社の「端末設計の中枢部」(PMCの櫛木好明代表取締役社長)に当たる設計企画・管理を担当する約140人を集約。NEC,PMCから端末開発の受託を受けて,端末の設計を行う。両社でこれまで別々に開発していたLSIやOS,ミドルウエア,一部のアプリケーションを共通化して,開発コストの削減や開発期間の短縮を狙う。

 合弁会社の設立に至った理由として,NECの矢野薫代表取締役執行役員社長は「技術が深く広くなっており,1社ではとてもカバーしきれなくなっている」と説明。携帯電話は第3世代携帯電話(3G)への移行で高速・大容量化が進み,さらにおサイフケータイ,ワンセグ放送,音楽プレーヤーの付加など機能強化が進んでいる。これに伴い,ミドルウエアやアプリケーションが肥大化。開発コストや工数を押し上げていた。

 開発を担当する合弁会社によって,多くのハードウエア,ソフトウエアの部品が共通化できる。これにより,商品の差異化に寄与しない技術開発の効率化を進める。松下電器の大坪文雄代表取締役社長は「効率化で生み出されたリソースを,新たな差異化技術に投入する。特に,家電と携帯電話の連携は今後さらに重要になる。PMCにその開発をする余力を残すためには,NECとの協業が必要不可欠と判断した」と語った。

 部品レベルでは共通化するが,ブランドや端末企画,デザイン,端末のUI(ユーザー・インタフェース),一部のアプリケーション,営業体制などは別にする。「NEC,パナソニックがそれぞれのらしさを打ち出して,トップを奪い合う協調と競争の関係を作りたい」(NECの矢野社長)としている。

「3G以降」で別途合弁,クアルコムに対抗

 同時に,NEC,NECエレクトロニクス,松下電器,PMC,米テキサス・インスツルメンツの5社は,3G以降の通信プラットフォームを開発する合弁会社を設立することを発表した。新会社の社名は「アドコアテック」で,8月中にも設立する。

 新会社は,通信LSIのアークテクチャを開発し,ライセンス販売することを目的としている。具体的には,NEC,松下,TIの3グループ各社から,GSMやW-CDMA関連技術を新会社にライセンス提供。新会社では,次世代通信LSIのアーキテクチャを開発する。開発されたチップの回路設計情報を,NECエレクトロニクス,松下電器の半導体社,TIにライセンス販売し,チップ・メーカー3社はそのチップを端末メーカーに販売する。NEC,PMC以外の端末メーカーへの外販も予定している。

 新会社が目指すビジネス・モデルは米クアルコムと似ており,競合が予想される。NECの大谷進・執行役員は「端末のマルチメディア化は,日本市場が世界で最も進んでおり優位な立場にあると思う。HSDPAでも先行しており,これにTIのGSM技術を加えれば強い技術を開発できる」と自信を見せる。2008年に,W-CDMAの世界市場で20%以上のシェアを獲得することを目指す。

 出資金額は120億円。NECとNECエレクトロニクスが53億円,松下電器産業とパナソニックモバイルコミュニケーションズが53億円,米TIが14億円をそれぞれ負担する。従業員数は約180人を予定し,社長はPMCから,副社長はNECから出向する予定だ。