2007年3月期第1四半期決算を説明するKDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長
2007年3月期第1四半期決算を説明するKDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長
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 「番号ポータビリティで販売コミッションを増額したり,(料金などの)値引きをするつもりはない」。KDDIの小野寺正社長(写真)は2006年7月21日,2007年3月期第1四半期(2006年4月から6月)決算発表の場で,番号ポータビリティをきっかけに料金競争に踏み込むつもりはないことをあらためて示した。携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)は2006年11月1日までに実施されることが決まっており,10月中の開始が見込まれる。

 同社の今期の決算は移動通信事業(auとツーカー)が引き続き好調で,固定通信事業の両方を合わせた売り上げは,対前年同期比11.8%増の7984億円,営業利益は同38.8%増の1219億円と増収増益を達成。同社は2007年通期の営業利益見通しを3180億円としているが,第1四半期だけで38.3%の進捗を達成した。携帯電話事業だけを見ると,売り上げは6398億円,営業利益は1297億円である。

 移動通信事業では解約率の低下が利益増に貢献。第1四半期は前年同期に比べて0.22ポイント改善して1.04%と非常に解約率が低くなった。しかも携帯電話事業者3社の中の純増シェアも48.1%と好調。「移動通信事業は利益が出やすくなっている」(小野寺社長)。解約率が落ち着いた理由として小野寺社長は,(1)「家族割」や「My割」などの料金政策の効果が出てきた,(2)番号ポータビリティの実施スケジュールがユーザーに浸透し,それを待つユーザーがいるかもしれない,といった点を挙げた。

 ただし,どの程度のユーザーが実際に番号ポータビリティで解約するかなど,その影響については未知数としている。冒頭の発言のように料金競争に踏み込むつもりは今のところないとしているものの,「他社との競争状況によってどうなるか分からないところもあるので,(番号ポータビリティが始まる)第3四半期以降で通期の業績が変わることもあり得る」(小野寺社長)と述べた。

 一方,固定通信事業の営業利益は99億円の赤字。とはいえ,新型固定電話サービス「メタルプラス」の販売が好調で6月末には222万加入を達成。固定通信事業の売り上げは対前年同期比23.3%増の1788億円だった。6月から東京電力と連携して開始したFTTH(fiber to the home)サービス「ひかりone」については,「現在は販売網の整備など準備段階にある。下期以降本格的に販売する」(小野寺社長)とした。