総務省は2006年7月19日,「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」がまとめた報告書案を公表し,8月23日を期限とする意見募集を開始した。「新競争プログラム2010」という副題が付けられたこの報告書案は,2005年10月から約9カ月をかけて練られたものだ。NTTグループに対するドミナント規制(支配的事業者規制)の見直しや,NTT東西地域会社の接続料算定方法の見直し,移動通信事業におけるMVNO(移動通信再販事業者)ガイドラインの見直しなど,9項目にわたる通信事業の競争促進政策が盛り込まれている。

 固定電話網からIP網への移行,さらにサービス競争の中心がブロードバンド(高速大容量)化で実現するアプリケーション分野に移行するといった通信事業を取り巻く環境変化に対応し,既存制度を抜本的に見直すという総務省の意気込みが表れた内容だ。

 注目に値するのは,NTTグループが2007年度下期に商用化する計画の次世代オールIP網「NGN」に対して,総務省から先手を打つ形で競争政策の在り方を示した点である。NTTグループが提唱するNGNはようやく技術仕様が固まり,今秋ごろから構築が始まる段階だ。それでも固定電話網を捨てNGNに本格的に移行するというNTTグループの強い意志は,ほかの通信事業者に強い警戒心を抱かせている。総務省はこうしたタイミングで,NTTグループにNGNへの移行段階でも規制当局として競争ルールを厳格に適用するという姿勢を表した(詳細は日経ニューメディア2006年7月24日号に掲載)。