東京大学 工学系研究科 技術開発戦略学専攻 教授 松島克守氏
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学術論文1万0675本分析による経営学俯瞰マップ
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IT Japan 2006 会場
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 「ビジネスモデルという設計図を使い経営戦略をITで実装せよ」---東京大学 工学系研究科 技術開発戦略学専攻 教授でビジネスモデル学会会長の松島克守氏は7月19日,IT Japan 2006の特別講演で,経営におけるビジネスモデルの重要さとそのITによる実装の重要性を指摘した。

 松島氏は「経営戦略はビジネスモデルに展開され,ITで実装されなければならない」と指摘する。ITは単なる経営のツールではなく,経営戦略の実装である。そして実装するための設計図がビジネスモデルであると松島氏は言う。設計図なしに何かを作ることはできない。「21世紀の経営はビジネスモデルをITシステムとして実装し,システムはビジネスモデルと一体化され,その戦略的・戦術的な変化に連動できる状態に到達した企業こそが勝者になる」(松島氏)。勝者は競争優位を得て利潤を生み出す。

 ただし,IT革命とは主役の交代であり,技術の革新は激しい。60年代までのIBMが主役のメインフレーム時代から,80年代,90年代のMicrosoftなどが主役のPC-AT互換機時代を経て,現在はGoogleなどが主役のネットワーク時代に入った。「Bill Gates氏が引退を表明したのは,自分の時代が終わったと感じたためだろう。ましてやCOBOL時代の知識で現在のIT戦略は描けない」(松島氏)。

 松島氏は「情報は現場でしか金に換えられない,情報は時間の領域で金に換える」と指摘する。それを実証するものが携帯電話をはじめとするユビキタス技術である。「ユビキタス技術は“すきま時間”を集めて時間を作り出す。そのことでネット時代の顧客にとっての価値を作り出す」(松島氏)。

 また松島氏は,ITはまだまだ経営における脇役でしかないとする。そのことの証左が,経営に関する論文の状況である。松島氏は経営に関する主要な学術論文1万0675本を調査したところ,ITというキーワードは他のキーワードから孤立している傾向にあることがわかった。キーワード間の相関を図上に距離として表すと,ITは端の方に孤立してプロットされる。松島氏は,ITはまだ十分に活用されておらず,さらにその価値が引き出し,経営の主役とならなければならないと指摘した。

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