異なるハードウエアの間でアプリケーションを移行する仮想化技術で先行する米TransitiveのCEO,Bob Wiederhold氏が,7月18日に都内で会見した。Solaris用アプリケーションをLinux上で動作させるソフトを2006年9月中に国内発売すると発表,その背景を「MacやSGIに仮想化技術を提供し,信頼性の高さを証明することができた。今後はより複雑でクリティカルなエンタープライズ市場を開拓する」(Wiederhold氏)と語った。

 Transitive社は,ハードウエア仮想化技術「QuickTransit」を米Apple社に「Rosetta」という名称で提供,PowerPCプロセッサからIntelプロセッサへの転換というAppleの戦略をバックアップした。2006年1月に出荷を開始したIntelプロセッサベースのMacintoshには全て「Rosetta」が搭載されている。半年間で100万台以上がリリースされ,「数千のMacOS用アプリケーションが問題なく稼働している」とWiederhold氏は話す。Transitive社は,グラフィックスワークステーションの米Silicon Graphics社に対しても,MIPSプロセッサ用のアプリケーションをIntelプロセッサ(Itanium)ベースで動作させる技術を2005年から提供しており,世界で数千台が稼働している。

 こうした実績を背景に,Transitive社は今回,基幹業務システム向けの2製品を開発,直接エンドユーザーに販売する戦略を打ち出した。発売するのは,SPARCプロセッサ上で動作するSolaris用(2.6以降)のアプリケーションを,IntelのXeonおよびItaniumプロセッサ搭載機のLinux上で動作可能にするソフト「QuickTransit for Solaris/SPARC to Linux/Xeon」および「QuickTransit for Solaris/SPARC to Linux/Itanium」。日本ではソリューション・ベンダーのネットワールドを通じて販売する。2006年7月末からまずXeon対応の製品のベータ2版を公開し,9月中に出荷する予定である。価格は1CPUソケット単位,1年間の使用ライセンスとサポート,保守契約込みで20万円。2年間では同38万円で,永久ライセンスにも対応する。Itaniumプロセッサ対応の製品は2006年末までに出荷する予定。

 「自社開発のアプリケーションが稼働している国内のSPARCサーバー約7万台をターゲットとする。今後3年間で4000台,8億円以上の売り上げを目指す」と,ネットワールド常務取締役マーケティング本部長の森田晶一氏は目標を掲げる。

 米Transitive社はもともと英国マンチェスター大学が開発した技術をベースに2000年10月に設立されたベンチャー。本社は米国シリコンバレーだが,現在も技術者70人を抱える開発拠点をマンチェスターに置く。未上場企業であり,売上高や利益などは公開していない。