米Transitiveの社長兼CEOのBob Wiederhold氏(右)と,Lead Field Solutions WngineerのFrank Weigel氏(左)
米Transitiveの社長兼CEOのBob Wiederhold氏(右)と,Lead Field Solutions WngineerのFrank Weigel氏(左)
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デモンストレーションでは,Linux/Xeon環境でSolaris/SPARCバイナリを実行させた。SPARCバイナリのシェルであるBashを起動し,Bash環境下で対話型にパッケージ導入ツールのpkgaddを用いてSPARCバイナリのテキスト・エディタXEmacsをインストールして実行した
デモンストレーションでは,Linux/Xeon環境でSolaris/SPARCバイナリを実行させた。SPARCバイナリのシェルであるBashを起動し,Bash環境下で対話型にパッケージ導入ツールのpkgaddを用いてSPARCバイナリのテキスト・エディタXEmacsをインストールして実行した
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 サーバー仮想化ソフトVMwareなどを販売するネットワールドは,企業が抱える既存の業務システムに手を加えることなく現行のサーバー環境に統合できるようにするソフトを2006年第3四半期に出荷する。米Sun MicrosystemsのSPARCアプリケーションを米IntelのCPU上で利用するためのミドルウエア「QuickTransit for Solaris/SPARC to Linux/Xeon」である。価格は,CPUソケットあたり1年間で20万円(税別),2年間で38万円(税別)。7月末には評価版(β版)をダウンロード配布する。

 QuickTransitの開発会社は米Transitive。米Appleの依頼を受け,Intel Mac上でPowerPC版ソフトを動作させるミドルウエアであるRosettaを開発して世に出た企業である。米SGIからは,IRIX/MIPSアプリケーションを米SGIのLinux/Itanuim2機上で動作させる機能を受注している。今回,Linux/Xeon環境上でSolaris/SPARCバイナリを動作させるという,サーバー統合のメインストリームに位置する製品バージョンを開発し,出荷するに至った。

 米Transitiveの社長兼CEO(最高経営責任者)であるBob Wiederhold氏が掲げる理念は,「すべてのアプリケーションは,すべてのコンピュータ上で動作できる」というもの。ソフトウエアとハードウエアの垣根を取り壊すことを目的に,ハードウエア環境を別のハードウエア上に構築するミドルウエアとしてQuickTransitを位置付ける。QuickTransitはモジュール型の構成を採っており,コストをかけずに新たなハードウエア向けのバージョンを開発できるという。最大の市場はLinux/Xeon版だが,AIX/PowerPCやLinux/PowerPC,Solaris/Opteronなどの上で動作するQuickTransitも簡単に出荷できるという。

 Intel CPU上でSolaris/SPARCバイナリを動作させる今回のバージョンを開発した経緯には,最大市場という点に加えて,2006年3月に米Intelからの要請と資金援助を受けたという状況もある。メインストリームであるXeonだけでなくItanium2版を用意した理由もまた,米Intelからの要請である。Xeonと比べるとItanium2の需要は低いが,米IntelはItanium2への投資にも注力する姿勢を示しているという。米Transitiveは,Linux/Xeon版のQuickTransit for Solaris/SPARCの出荷から1カ月後にLinux/Itanuim2版の出荷を予定している。

 サーバー統合の目的は,TCO(Total Cost of Ownership)の削減である。既存のサーバー機が占有している設置場所や電力,冷却設備などを開放し,米Intel系のCPU搭載機にリプレースするユーザー企業が多い。米Intel系CPUを搭載したサーバー機とVMwareなどのサーバー統合ミドルウエアの採用が進んでいるが,「VMwareとQuickTransitを組み合わせることで,Intel CPU採用のサーバー機だけでなく,既存のSPARCサーバー機までもサーバー統合の対象にできる」(Bob Wiederhold氏)。

 国内のユーザー企業が使っているSPARCサーバーの台数を7万台以上と見積もるのが,QuickTransitを販売するネットワールドである。このマーケットに対してネットワールドでは,今後3年間で4000台以上,8億円以上の売上を見込む。「IT機器のコモディティ化は,特にサーバー分野において止まることを知らない。仮想化技術によって,ハードウエアの低価格化に拍車がかかっている。今までは互換性がなかったがゆえに存在価値があったRISC系サーバーも,もはや例外ではない」(ネットワールド常務取締役マーケティング本部長の森田晶一氏)。