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 家庭向けパソコンの夏商戦の出足が重い(関連情報)。ジーエフケーマーケティングサービスジャパン(GfK Japan)が集計した家電量販店3000店のPOSデータによると、2006年5月の家庭向けパソコンの販売台数は対前年同月比16%減、販売金額は同19.6%減と大幅な落ち込みを記録した。図のように、2006年は3月まで前年実績とほぼ同程度の販売台数を確保していたが、4月以降は前年実績を大きく下回っている。6月の販売台数も、同2割減程度で推移しているという。

 特に情勢が厳しいのはデスクトップ機で、対前年同月比28.5%減と振るわない。前年の5月には、ゲートウェイの低価格デスクトップ機「eMachines J3016」の販売好調という特殊要因があったが、それを差し引いても台数ベースで2けた減という。「いわゆるテレビパソコンが弱含み。地上デジタル放送のチューナーを備えたテレパソは伸びているが、家庭向けパソコン全体に占める割合は1割程度とまだ小さく、市場全体を牽引するには至っていない」(GfK Japan)。一方のノートパソコンは、販売台数こそ同6.4%減で、デスクトップパソコンに比べれば減少幅は小さい。しかし、前年同期には14万8620円だった平均単価が、今期は13万7343円と1万円以上の大幅減となっている。

 メーカー各社も厳しさを感じている。「4月末の大型連休前後から販売台数が減り始め、現在は対前年同期比15%減前後。もともと今年は厳しいとみていたが、ここまで悪いとは思わなかった」(富士通)、「苦戦している。W杯商戦でAV機器に顧客が流れたことに加え、パソコンの中でも低価格のノートパソコンへユーザーの目が向いているという印象がある」(NEC)、「アナログチューナー内蔵のテレパソの落ち込みを、地デジチューナー内蔵のテレパソで補いきれていないのではないか」(シャープ)といった見方をしている。

 東京都内の大手家電量販店も、「W杯に伴う商戦が最高潮だった6月3~4日と10~11日の週末は、32型以上の薄型テレビが対前年同期比3倍、DVDレコーダーも同2倍と好調な販売実績を記録した。しかしパソコンは、前年割れではないものの、ほぼ前年並みの販売実績だった。W杯商戦の波に乗れていないという印象だ」としている。

「差額が2万円なら地デジを選ぶ」というユーザーも

 全体的な販売台数は減っているものの、メーカーの中には一部の製品に対して、いくらかの手応えを感じているところもある。例えば富士通は、地デジチューナー内蔵のデスクトップパソコン「FMV-DESKPOWER LX50S/D」(実勢価格は約22万円)の引き合いが好調。GfK Japanによる製品別の販売台数ランキングでも、デスクトップパソコンの上位5位以内に食い込んでいる。「アナログチューナー内蔵の『同LX50S』(実勢価格は約20万円)も販売しているが、ユーザーが店頭で商品を選ぶ際に、『差額が2万円ならば地デジにしよう』と選ぶケースが目立っている。テレパソのラインアップを拡充したことに加え、地デジチューナー内蔵機の価格がこなれてきたことで、パソコンでテレビを視聴するという需要を少しは喚起できたと思う。そういう意味では、前回(2002年のW杯商戦)ほど悪い状況ではないと前向きに考えている」(富士通)という。

 東芝も「当社としては、販売状況はむしろ伸びている」という。同社はデスクトップパソコンを手がけず、ノートパソコンに特化する戦略を採っている。夏モデルでは、低価格のノートパソコン「dynabook AX/840LS」が好調。ノートパソコンの販売台数ランキングで1位~2位を維持している。テレビチューナー内蔵で15.4型液晶を搭載した「Qosmio F30」をラインアップに追加したことも好調の一因となったようだ。