コンテストでは,レゴブロック(LEGO MINDSTORMS)で作成した同一の車体(ロボット)に,各チームが独自にC言語やJavaで開発した制御プログラムを搭載。自律走行させてレースを実施し,走行性能を競う。併せて,ロボットに搭載する制御プログラムのソフトウエア設計モデルについて審査する。単純に考えると,設計モデルが優秀な制御プログラムを搭載したロボットのほうが高い性能を発揮しそうだが,実際には「レースの結果と,モデルの良し悪しが一致しないという事実が参加者と審査員を苦しめてきた」(コンテスト実行委員会)という。5回目を迎えた今回は,モデル審査の基準を「理論的に美しい」だけでなく,「走行性能が高い実践的なモデル」であるかどうかも重視することで,走行競技会の結果とモデル審査の結果に相関関係が出てくるのではないか,というところも期待されるポイントとなった。
走行競技会の会場には一周約20メートルのコースが設けられた(写真1)。参加チーム数が昨年から倍増したこともあり,同じコースを二つ用意。それぞれで2チームずつが同時に出走し,スタートから2周してゴールするまでのタイムを競った(写真2,3,4)。タイム・トライアルは,インコース,アウトコースでそれぞれ1回ずつ,合計2回である。
レースにおいては,ロボットの光センサーを使ってコースに描かれた黒いラインを検出し,ラインに沿ってできるだけ速く走行するのが基本的な戦略となる。また,コースから外れたときにどのように復帰するかという「例外処理」の扱いも完走するためには重要なファクターだ。さらに,コース内には挑戦的な課題として,基本ルートから分岐するルートとして「近道」や「Zクランク」(写真5)などの“難所”が設けられており,参加者はそれらをどのように扱うか,という選択も迫られる。難所をクリアすることによってボーナス点を取得できる(実際には,走行タイムから所定時間を引く)が,こうしたところを通るとコースを外れるリスクが高まるからだ。
競技会における完走率は,おおよそ2~3割。コースアウトして競技台から転落したり,途中で立ち止まったり,コースを逆走したり,といったアクシデントに見舞われるチームが多かった中,コースを2周してゴール・ゲートの“狭き門”に辿りついたロボットは,会場からの拍手とチームの歓声で迎えられた(写真6)。また,難所に挑むロボットには大きな声援が送られた。特に,今回のコースの目玉である「Zクランク」は,そこにロボットが入るだけで場内はぐっと盛り上がり,ロボットの一挙一動に対して大きな歓声や嘆息があがるなど会場を大いに沸かせた(写真7)。難所に挑戦することをスタートの前に予告して,実際にそれをクリアするチームも現れるなど,イベント的な見せ場もあった。
結果は,安定した走りを見せた「O.R.C(オリンパスソフトウェアテクノロジー,写真8)」が第1位。2位が「TEAM-DRAGON(ソフトウェアコントロール 関西支社)」,3位が「QUEST(ユニテル)」。ほかに,Zクランクを見事クリアした「アクティブウィング(富士通ラーニングメディア 西日本ソリューション部)」と「田町レーシング(オージス総研 組み込みソリューション部)には審査員特別賞が贈られた。さらに,走行タイムが5位で,設計モデル審査における評価も高かった「なんだいや(仮)(リコーソフトウエア プロダクト事業部鳥取第三開発C)は,「モデルと走りの相関が取れている」としてJASA(組込みシステム技術協会)賞を受賞した。
一方,ソフトウエア設計モデルの審査では,エクセレントモデルが「ムンムン(NECソフトウェア北陸)」,ゴールドモデルが「Realizing(オムロン)」,シルバーモデルが「豆ロボ(豆蔵)」,審査員特別賞が「Teamふるかわ(アルプス電気 車載電装事業部/ファームウェア技術部1グループ)」と「田町レーシング(オージス総研 組み込みソリューション部)」,JASA賞が「猫飯(ねこまんま)(キャッツ ソフトウェア事業部,専修大学ネットワーク情報学部)」。ロボットの設計モデルはすべて会場内にパネル展示されていたが,これらのモデルのパネルの前には大きな人垣ができ,関心を集めていた。
2006年11月には,今回の競技会において成績が優秀だった30チームが参加する「チャンピオンシップ大会」が開催される(11月15~17日に横浜で開催される組込み総合技術展ET2006のうち1日)。若手技術者たちの熱気を肌で感じるためにも,見に行ってみてはいかがだろうか。