写真 総務省が6月29日に開催した情報通信審議会情報通信技術分科会の様子<br>写真手前が東北大学の杉浦行教授
写真 総務省が6月29日に開催した情報通信審議会情報通信技術分科会の様子<br>写真手前が東北大学の杉浦行教授
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 総務省は6月29日,「情報通信審議会情報通信技術分科会」の第41回会合を開催。情報通信審議会配下の「CISPR委員会」が高速電力線通信の規制値と測定方法について取りまとめた報告書を答申した。

 答申した規制値と測定方法は,7月12日から電波監理審議会で審議される。電波監理審議会での審議が最短の3カ月で終了すれば,10月にも省令改正する見通しだ。

 会合では,CISPR委員会の主査を務めた東北大学電気通信研究所の杉浦行教授が報告書の内容を説明した(関連記事)。「推進派(メーカーや電力会社など)と慎重派(日本アマチュア無線連盟など)の主張には大きなかい離があった。メーカーからは『厳しすぎる』と言われたものの,最終的には了承を得ることができた」と振り返った。

 後藤滋樹委員(早稲田大学理工学部教授)から通信速度について質問が飛ぶと,杉浦教授は「(屋内のコンセントの)約50%で50Mビット/秒,90%で数メガは出るはず」とコメント。さらに御手洗顕委員(シャープ顧問)からは,「厳しい規制を課したのだから見直しの機会が持てるように配慮すべき」という意見が出され,「現在検討中の国際規格が決まれば,国内での規制値も見直しが必要になると認識している」と杉浦教授は回答した。

 さらに村上輝康委員(野村総合研究所理事長)からは,「e-JAPANに電力線通信の規制緩和を盛り込んだのは3年前。まだこんな状況だったのかという印象は否めない。ブロードバンドを推進するのに,ホーム・ネットワークの帯域が数十メガでは不足している。技術的に高速化は可能なのだから,利用環境によって規制値を変えるような考え方もあるのではないか」と苦言を呈した。

 電力線通信の実用化議論が始まってから足掛け5年。ようやく規制緩和が確かなものになった。推進派と慎重派の意見が激しくぶつかる難しい議論に決着が見えたことは評価に値する。だが村上委員のコメントが象徴するように,5年という歳月はあまりに長かったという印象はぬぐえない。

●日経コミュニケーション編集部より 「日本アマチュア無線」は「日本アマチュア無線連盟」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。2006.06.30
当初,「厳しい規制を課したのだから…」という意見を根元義章委員(東北大学大学院情報科学研究科教授)の発言としていましたが,根元委員の発言を含めた一連の質疑応答の中で,正確には御手洗顕委員(シャープ顧問)が発言したものであることが判明いたしました。お詫びして訂正いたします。2006.07.03