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商社にとって「情報」は命綱です。量、質、スピードすべての面で、情報をいかに全社員、全グループの間で共有化するか、このことを伊藤忠商事では創業以来150年間、意識して経営に取り組んできました。
これまでもテレックス、ファックス、インターネットと、技術の進化の恩恵は受けてきました。しかし、攻めの経営を今後さらに加速させようと考えると、当社のIT(情報技術)投資は決して十分なレベルに達しているとは言えない。今、具体的にどんな課題に直面し、どう取り組もうとしているのか今日は説明したいと思います。
まず、情報化投資で経営管理の分野として取り組んでいるのが、最も大切である決算です。いかに「正確」かつ「迅速」に行うか。当社では私が入社して以来、GW明けの5月10日前後に決算発表をしていました。しかし、今年は初めてGW前の4月28日と、従来より10日ほど早めて決算発表を行いました。
例年は、GW中に手作業で決算をまとめていただけに、決算を前倒しすることについては当初、現場からは大変な不満が出ました。しかし、結果的には市場の「迅速性」という要望に応えると同時に、決算関係の社員も初めてGWを休むことができました。
ただ、それでも年度末から依然4週間かかっている。なぜか。決算対象には海外123店舗、グループ企業650社が含まれる。海外店舗には積極的な情報化投資を行ってきましたが、現地の通信回線の問題や現地で採用する社員の情報リタラシーの問題など様々あってシステムがなかなか浸透せず、スピードが上がらない。グループ企業は、各社の戦略に基づいてIT投資を行っているため、これもなかなか株主である当社の要望が反映されないという問題があります。
また、これまではシステムを当社のユニークな業務に合わせて開発してきたが、標準システムとオーダーメードと本当はどちらがよいのかという問題もある。この悩みは非常に大きい。
しかし、はっきりしているのは各拠点、グループ会社に浸透し、決算をスピードアップできるようなシステムの開発は不可欠で、この問題を放置しておくわけにはいきません。米シスコシステムズのように毎日連結決算ができるというのは難しいにしても、IT投資を続け、次は年度末から3週間で決算発表を行えるようにしたいと考えています。