東京都立川市が、基幹系業務システムをアウトソーシングする契約を事業者2社と結び、今秋より稼働を開始することが明らかになった。今年10月から2012年3月まで5年半の契約で、運用費と開発費を合わせた契約金額の総額は約23億円に上る。共通基盤と財務会計システムの予算編成業務が今年10月から、来年1月に住民情報系の13業務が、同4月に文書管理と財務会計の予算編成以外の業務が稼動する予定になっている。

 アウトソーシングする対象は、住民記録や印鑑登録、固定資産税・都市計画税などの住民情報を扱う基幹系13業務と、文書管理、財務会計の各システム。加えて、複数のシステムで共通利用する共通基盤(利用者管理と決裁)も対象となる(表を参照)。基幹系業務と文書管理、共通基盤はアイネスと約20億円で、財務会計はジャパンシステムと約3億円で契約した。これらのシステムはデータセンターでアイネスが運用・管理を行う。

■表 立川市のアウトソーシングの概要
大分類 個別業務 サービス提供事業者 契約内容 開始時期
共通基盤 利用者管理、決裁 アイネス 約20億円:2006年10月~2012年3月までのサービス提供契約。支払いは3カ月ごと 2006年10月
住民情報系 住民記録、印鑑登録、外国人登録、個人市・都民税、法人市民税、固定資産税・都市計画税、軽自動車税、収納・滞納管理、国民健康保険、老人保健、児童福祉関連、共通宛名管理、国民年金 2007年1月
文書管理 文書管理 2007年4月
財務会計 財務関係 ジャパンシステム 約3億円:2006年10月~2012年3月までのサービス提供契約。支払いは3カ月ごと 2006年10月
(予算編成業務)
2007年4月
(その他業務)

 立川市では、これまでメインフレームによる基幹系システムを庁舎内で自前で運用していたが、オープン系システムをデータセンターでアウトソーシングする運用形態に切り替える。新しい住民情報系ステムは、サーバーを借りるホスティングやサーバーを購入して管理を委託するハウジングではなく、ソフトウエア資産はベンダーが所有してサービスだけを購入するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)的なサービス提供契約をベンダーと結ぶ形になる。

 業者の選定に当たっては、2005年6月~8月にかけて立川市のホームページで、事業者からの企画提案を公募。応募があった中から、プロポーザル形式で総合評価による最優秀提案事業者を選定した上で随意契約を結んだ(債務負担行為で複数年契約)。また事業者選定に際しては、外部の専門家も加え、技術点と価格点を7:3の割合で点数化して評価した。

 立川市がオープン系システムのアウトソーシングへの切り替えを選択した最大の理由は、コスト面にある。まず、現行の汎用機と専用端末からなるシステムが老朽化しており、「現在85台ある専用端末は、来年3月で保守期限が切れる。しかも、現システムにはログが取れないなどセキュリティ上の問題もある」(立川市総合政策部の岡部利和情報推進課長)。同市の試算では、現行システムを改修して利用した場合、約30億円の資金が必要となる。これと比較して、7億円程度の運用費を節約できる計算になる。

 さらに2009年に新庁舎への移転が決まっており、「新庁舎に広いサーバールームを作らずに済むし、機器の移転費用もかからない。合わせて2~3億円程度の費用が節減できる」(同市総合政策部江元哲也主幹)という。

 単独のベンダーに頼り切っている状態を脱することができることも、オープン化の理由の一つにあげている。立川市では、庶務事務など他の業務システムも今後共通基盤上で稼働させることを考えている。このため、システム稼働時には、必要に応じて共通基盤のインタフェースの仕様を開示するというSLA(サービスレベル契約)をアイネスと結ぶことになっている。

 新規システム案件が出てきた場合にも共通基盤を構築したアイネスが有利だとはいえそうだが、江元主幹は「実際、財務会計はジャパンシステムと契約をした。特定の分野に優れた能力やシステムを持つベンダーを選定できる」と利点をあげている。なお次回のシステム更新の際には、現行の契約事業者にこだわらず、再度事業者選定を実施するという。(本間 康裕)