NTT西日本は6月26日,野生鳥獣,特にサルによる農作物の被害を防ぐ「鳥獣害(猿害)対策支援システム」を発表した。6月28日に提供を始める。サルの群れの一頭にRFIDタグを取り付け,そのサルがRFID読み取り機のエリアに侵入してくることを監視。侵入を検知すると,即座に役場などに設置したサーバーを介して「どのエリアにどのサルが侵入したか」を住民にメールで通知する。現地ではパトライトを回しサイレンを鳴らす。

 同システムは,NTT研究所が開発したマルチホップ型のRFIDタグを使用する。商用化は同システムが初。このRFIDタグは「電波の発信」「電波の読み取り」「電波の中継」の3役をこなせるもの。サルには発信に設定したタグを取り付ける一方で,侵入を検知し,その情報をサーバーに送りパトライトを回す設備には読み取りに設定したタグを置く。山中などネットワークが届かない場所には,中継にセットしたタグを設置する。このタグは,ほかのタグから送られてきた情報の中継とサルに付けたタグの読み取りを兼ねる。

 RFIDタグは429MHz帯の周波数を使い,無線免許の申請と無線従事者の配置は不要。見通しがよければ,半径1km程度電波が届く。ただし各タグにはバッテリが必要。例えばサルに付けたタグを30秒に1回電波を発信するよう設定すると,単1形乾電池1本で3年間もつという。RFID本体のサイズは,単1形乾電池を少し平たくした程度だ。

 価格はパトライト,受信に設定したRDIFタグ1個を含む監視装置,役場などに設置するサーバーと監視用アプリケーション,サルに付ける電波を発信するRFIDタグ1個のセットで210万円。今後はサル以外の野生鳥獣にも対応できるよう機能向上を図るという。