三井住友銀行が内定者向けに提供しているeラーニングの画面
三井住友銀行が内定者向けに提供しているeラーニングの画面
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 三井住友銀行が入社内定中の学生に対するeラーニングに力を入れている。入行してからの業務に必要な資格の取得時期が例年よりも大幅に早まるなど1年目の昨年は一定の成果が上がった。

 同行にこの春入社した新卒社員はおよそ1000人。彼らは入社内定が決まった昨年11月以降にインターネットによる研修制度を利用した。人事部の採用・教育グループの梅山広志部長代理は「導入のきっかけは学生からの要望。入社に備えて『どういった勉強や準備をしていたら良いのか』という声を聞くことが多かった」という。

 従来、同行では内定者向け教育といえば、新聞の読み方を指南した書籍と5冊程度の推薦図書のリストを配布するのみだった。「残り少ない学生生活を満喫してほしい」というのが内定者である学生への姿勢だった。

 しかし、毎年の新入社員は業務に必須な証券外務員試験を6~10月に受けるのだが、慣れない仕事の疲れと重なり大きな負担になっていた。eラーニングでは資格の取得に主眼を置いた。今年入社した新入社員は、昨年の秋からインターネットで証券外務員二種の学習をしてきたため、総合職の社員では、例年より5カ月前倒しで受験したものの合格率は例年通りだった。ほかにTOEICやビジネススキルなども提供している。ただし内定者に対する教育は強制ではなく、「あくまで学生の自主性に委ねている」(梅山部長代理)という。eラーニングの基盤と一部のコンテンツは、レビックグローバル(東京・渋谷)が開発したものを採用した。

 景気回復に加えて、団塊世代が定年し始める「2007年問題」を目前に控え、多くの企業が新卒採用に力を入れている。リクルートの研究機関であるワークス研究所の調べによると、2007年3月に卒業を予定している大学生と大学院生に対する企業の求人総数は前年比18%増の82万5000人で、最も多かった1991年に次ぐ水準だという。なかでも金融業の求人数は26.7%増で最も高い伸びを見せた。

 一般に、eラーニングは受講者数が多ければ多いほど一人当たりにかけるコストは安価になる。三井住友銀行も、来春は今年に比べて20%増の1200人を迎える予定だ。内定者は全国に散らばっている。海外の大学から国内の企業への入社を希望する学生もいる。採用人員の増加という背景が、企業の人事担当者にeラーニングに今一度目を向かせることになるかもしれない。