NECは6月23日,VoIP(voice over IP)の通話品質を向上させるミドルウエアを開発したと発表した。今秋にも,同社のソフトフォン「DtermSP30」やWeb会議システム「コミュニケーションドア」に組み込む意向だ。

 通話品質を劣化させる原因として,パケットがなくなること(パケットロス)やパソコンに高い負荷を与えるアプリケーションなどが挙げられる。これらにより音が途切れるといった現象が発生する。オフィスのエアコンが発する音やハンズフリーキットを使う際に発生するエコーも,通話品質にマイナスの影響を及ぼす。

 そこでNECは今回開発したミドルウエアに,通話品質が劣化する要因を解消するための機能を用意した。まずVoIP用のエラー訂正技術を搭載。送受信するVoIPのデータに冗長性を持たせ,伝送中にパケットロスが起こっても他の到達したパケットから復元する仕組みを搭載した。

 ジッター(パケットごとに転送速度や到着間隔がばらつくこと)の状態を検知し,動的にバッファの大きさを変える「ジッタバッファ制御技術」も開発した。パソコンのCPU使用率などの状態も把握でき,パソコンに高い負荷を与えるアプリケーションを併用しても音が途切れにくくなる。エアコンやパソコンの雑音,ハンズフリー会議をする際のエコーを除去する音響処理技術も盛り込んだ。

 広い帯域に向くコーデックと狭い帯域に向くコーデックを,ネットワーク環境により使い分けることでも,音質劣化の可能性を低下できる。しかしITU-Tが策定した「G.711/G.722」や3GPPで策定した「AMR/AMR-WB」など複数あるコーデックを,ネットワーク利用環境により選べるソフトフォンは少ないという。そこでNECが開発したミドルウエアでは複数のコーデックを採用し,ネットワーク環境や品質に応じて選択可能にした。

 ただし,今回開発したミドルウエアを適用できるのは,UDPを使うアプリケーションのみ。今後は,TCPにも対応させていくという。