通信・放送分野の改革案について,政府・与党が6月20日時点で合意していたことが明らかになった。焦点となっていたNTTの組織問題は,政府・与党の合意文書に「2010年の時点で検討を行い,その後速やかに結論を得る」と明記している。

 合意文書である「通信・放送の在り方に関する政府与党合意」には,最終調整に当たった竹中平蔵総務大臣や片山虎之助自由民主党参院幹事長などが既に承認のサイン済み。22日現在,自民党や公明党,総務省など関連部署の幹部の承認を待っている状態で,これらの承認がすべて取れ次第,合意内容は来週にも正式発表される見込みだ。この政府与党合意の内容が,7月上旬にまとめられる経済財政運営の基本方針「骨太方針」に反映される。

 竹中総務大臣は,自身が主催した「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)で,「『2010年には』通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を速やかに始めるべき」(『』は編集部による注記)と提言する内容の報告書を発表していた。一方,与党である自民党の片山参院幹事長が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)は,NTTの組織問題について,「拙速に結論を出すべきでなく,『2010年ころ』にNTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ」と提言していた。NTTの在り方に関しては,竹中懇談会と片山委員会の見解が一致せず,骨太方針への反映を巡り調整を続けてきた。

 今回の政府与党合意に明文化される「『2010年の時点』で検討を行い,その後速やかに結論を得る」という表現は,竹中懇談会と片山委員会の折衷案と言える。最後まで議論となったのは,「2010年の時点」という文言だった。

 片山委員会の案ではNTTの組織見直しを「2010年ころに」としていたが,この文言であれば,検討開始は2010年に限定されず,2012年や2013年に検討するという解釈も可能。だが,「2010年の時点」と明記することで,4年後の検討開始が約束される。合意文書の表現は一見すると,「2010年までに」と主張してきた竹中懇談会が大幅に譲歩したように見えるが,もともとの片山委員会の案からも時期が前倒しとなる格好。「2010年の時点」という明確な表現は,2010年までの検討開始を求めた竹中懇談会と,2010年以降の検討開始を提言した片山委員会の,最終調整における落としどころとなった。

 NTTの組織問題について「2010年の時点で検討」と,議論の時期を明確化することには,NTTからの猛反発があったとされている。竹中懇談会と片山委員会の意見のすり合わせに時間がかかった背景には,当事者であるNTTとの調整にも時間を費やした事情も絡んでいるようだ。