情報戦略/業務革新

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日販とCCCの新会社が始動、
「TSUTAYA」の複合化を促す

2006/06/23
杉山 泰一=日経情報ストラテジー (筆者執筆記事一覧
MPDの東日本地域の物流センターである「和光メディアセンター」(埼玉県和光市)。総床面積は4600坪(4フロア)。レンタルCD・DVDの1日当たりの出荷枚数は業界最大だという
MPDの東日本地域の物流センターである「和光メディアセンター」(埼玉県和光市)。総床面積は4600坪(4フロア)。レンタルCD・DVDの1日当たりの出荷枚数は業界最大だという
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MPDの吉川英作社長(左)と川村興市常務。吉川社長は日本出版販売の、川村常務はCCCの出身者。MPDの総従業員数は300人弱。今年度の売上高は2000億円を目指す
MPDの吉川英作社長(左)と川村興市常務。吉川社長は日本出版販売の、川村常務はCCCの出身者。MPDの総従業員数は300人弱。今年度の売上高は2000億円を目指す
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 書籍・雑誌の取次最大手の日本出版販売(日販)と、CD・DVDレンタル店「TSUTAYA」で知られるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の共同出資会社MPD(東京・渋谷)が7月1日、本格的に業務を開始する。

 同社は、TSUTAYAの店舗で扱うすべての商品の納品や返品、請求書の発行を担う。これらの業務を順次一本化することによって、TSUTAYA店舗の収益性の向上や品ぞろえの拡充などを目指す。

 これまでは1つのTSUTAYA店舗に対し、複数の業者がCDやDVD、ゲーム、書籍、雑誌を納品。日販が書籍や雑誌を、日販の子会社である日本メディアリンク(JML)がレンタルCDを、CCC系の日本ソフトサービス(NSS)がセルCD・DVD・ゲームとレンタルDVDを、同じくユーファクトリー(UF)が中古商品を納めていた。MPDは業務開始に伴い、JMLとNSSを吸収合併し、UFから中古商品取り扱い業務を譲渡された。

 MPDが各種商品の納品、返品、請求を一括すれば、TSUTAYA店舗で1日5~6回発生する商品の受け渡し作業を、開店前の1回に絞りこめる。その結果、TSUTAYA店舗は物流費と運営負荷を低減できる。さらに、従来はCD・DVDのレンタルと販売しかしていなかった店舗でも、書籍・雑誌の販売を手がけやすくなる。現在1276店あるTSUTAYA店舗の多くはフランチャイズ。そのうち書籍・雑誌売場のない店舗は400~500店存在するようだ。

 MPDはまず7月から、東日本地域にあるTSUTAYA店舗に対して、レンタルCDとレンタルDVDの一括納品・請求を始める。日販と協力しながら、書籍や雑誌の物流も順次MPDが請け負う。さらに今年度中にも、セルCD・DVD・ゲームの納品や、すべての商品の返品も束ねる。西日本地域でも年度内に同様の業務をスタートさせる。

 レンタルDVDについては現在、CCCグループ会社のレントラックジャパンが独自のPPT方式(レンタル実績に応じた出来高払い方式)で、7~8割のTSUTAYA店舗に貸し出している。MPDはレントラックから物流部分だけ請け負いたい考えだ。また中古商品に関しては、MPDは新店オープンの際の初期在庫の納品をメインに手がける。中古商品は通常、各TSUTAYA店舗で消費者から直接買い取り、それを再販したほうが利益率は高いため、既存店のニーズは低いからだ。

 MPDは本格的な業務開始に先立ち、埼玉県和光市に4600坪(4フロア)の床面積を持つ物流センター「和光メディアセンター」を開設。既にレンタル用のCDとDVDを1日に最大20万枚出荷できる体制を整えた。日販出身の吉川英作MPD社長は、「業界最大の規模だ」と力強い口調で説明する。

会員情報生かし、メーカーに提案営業も

 吉川社長は、MPDを単なる物流会社の枠に留めるつもりはない。TSUTAYA会員のポイントカード情報を活用して、TSUTAYA店舗オーナーや出版社、CD・DVDメーカーとウィン-ウィンの関係を築きたい考えだ。

 具体的にはこんな情報戦略を採る。

 CCCでは、1900万人を超すTSUTAYA会員の属性や利用履歴をベースに、店舗ごとのクラスター分析ができるIT(情報技術)インフラが整備されている。そこで、例えばある出版社が固定ファンの多い作家の新作を何部刷ったらいいか悩んでいたとする。この作家のファンだと推定される層のTSUTAYA会員に、新作を告知するメールを送り、ポイント2倍キャンペーンなどを実施して店舗での予約を促す。こうした一連のマーケティング活動の反響を分析して、MPDが出版社に適切と考えられる初版部数をアドバイスするという。

 こうすれば、店舗は来店客を増やしたり、在庫切れを起こしがちなヒット作品を確保しやすくなる。出版社は無駄な在庫を減らしたり、機会ロスを減らしたりできる。MPDは店舗オーナーや出版社と良い条件でビジネスができる。さらに、TSUTAYAからMPDに常務として就任した川村興市氏は、「TSUTAYAの会員情報は1年ごとに更新しているので、情報の精度が高い」と補足する。将来的にはこうした強みを生かし、日販以外の会社と本の取り次ぎ契約をしている書店も開拓したい意向だ。

 MPDの吉川社長や川村常務は、CCCの増田宗昭社長から「世界一の卸し会社を目指せ」とハッパをかけられた。吉川社長はこの期待の声に対し、「CCC出身の社員は企画力が秀でている。一方、日販から来た社員は効率やコストに対する意識が強い。文化の違う2つの会社の出身者でできたMPDは、画期的なプロフィットを生み出すSCMを構築できる」と意欲的だ。2009年3月期の売上高は2400億円を目指す。今期は2000億円の見通しである。

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