写真 質疑に応じるKDDIの小野寺正社長兼会長
写真 質疑に応じるKDDIの小野寺正社長兼会長
[画像のクリックで拡大表示]

 KDDIの小野寺正社長兼会長は6月21日,定例の社長会見を開催した(写真1)。冒頭で小野寺社長は,6月13日に公表した顧客情報漏えいについての調査状況を報告し,今後の対策を述べた。現在,外部に情報が流出した経路を特定するための社内調査を進め,警察当局に協力しているところだという。

 さらに流出内容について新たに明らかになった事実を公表した。漏えいした個人情報の中には,KDDIが他のプロバイダ経由で提供しているIP電話サービスに申し込んだユーザー1892人分と,ネット上で決済サービスなどを提供している法人ユーザー997社分の情報も含まれていたことが判明したという。

 ただしこれらの数は,KDDIから漏えいした個人情報数として公表した「399万6789人」に既に含まれているものだとした。「(KDDIから漏えいした個人情報について)これまで『当社のプロバイダ・サービスであるDIONユーザーの個人情報だけ』と言ってきたが,他のプロバイダ経由でIP電話に申し込んだDIONでないユーザー分なども含まれていたことが分かったため,今回追加情報としてあえて発表した」(小野寺社長)。

 KDDIは6月14日付けで特別対策委員会を発足させ,今後のセキュリティ対策についてのアクションプランを策定しているという。信用情報などの重要な個人情報へのアクセス権限の限定や,個人情報保護に対するe-ラーニングの徹底など,これまでのセキュリティ対策の実施状況を6月末までに再点検する。加えて,「8月上旬にセキュリティ強化対策と実行計画を発表する」(小野寺社長)。

 その後の質疑応答の中で小野寺社長は,竹中平蔵総務大臣が主催した「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)の最終報告についてもコメントした。「懇談会として発表した内容が,与党との合意でどういう形になるかは分からないが,『2010年』というターゲットを決めてNTTの構造問題や組織問題を何とかすると決めたことは大きい。一部報道にあるように,懇談会の主張が後退したとは思わない。何もなければ(NTTの組織問題などについて)あそこまでの議論にはならなかった」と評価した。

 竹中懇談会は6月6日,「2010年には通信関連法制を抜本的に見直すため,NTT持ち株会社の廃止などを含む検討を速やかに始めるべき」と提言する内容の報告書を発表済み。一方,与党である自由民主党の片山虎之助参院幹事長が委員長を務める「電気通信調査会 通信・放送産業高度化小委員会」(片山委員会)は,NTTの組織問題について,「拙速に結論を出すべきではなく,2010年ころにNTT法などの関連法令の改正を検討するべきだ」と提言している。NTTの在り方に関して竹中懇談会と片山委員会の見解が一致していないため,政策の基本方針となる政府の「骨太方針」への反映を巡り調整が続けられている。