ボックスティッシュなどの家庭紙商品を主力とする王子ネピア(東京・中央)が取り組んでいるSCM(サプライチェーン・マネジメント)改革が功を奏している。改革に取り組み始めた2003年と比べて、在庫日数が38日分から2005年12月には28日分まで削減した。さらに、効果を向上させるために現在、営業部門の意識改革に取り組んでいる。

 SCM改革の大きな狙いは在庫削減だ。主力製品であるボックスティッシュはスーパーやドラッグストアで特売品となるケースが多い。特売品となれば、通常よりも大量の注文が入ってくるため、需要のぶれが大きい。月に1度しか販売計画を修正できないがために、多く発注して抱え込む傾向にあった。営業部門から特売の情報が生産部門へきちんと伝わらなければ欠品や在庫過剰を招いてしまう。しかし、従来は特売情報の共有が十分ではなかった。月に1度、紙によって情報をやり取りしている程度だった。需要予測の精度を向上させるには、特売情報を正確に、しかも素早く生産計画に反映する体制が欠かせなかった。

 そこで同社は、需給調整を担当する部門を生産部門から営業部門の傘下に配置替えした。さらに、従来は月次だった生産計画の見直しを週次に変えた。こうした改革に併せて、新たに需要予測システムを導入。既存の営業支援システム「戦略箱」で管理する商談情報のうち、数量や価格、納期といった予測に必要な情報をリアルタイムで新システムに取り込めるようにした。

 一連の改革の背景には、小売店から特売情報をもらえる時期が遅くなってきたことがある。従来は、特売の実施は1カ月前には決められていた。しかし、小売りの競争激化によって、他店の状況をみて目玉商品を変えるといったことが多くなり、直近まで分からなくなってきた。そのため、月次の体制では変化に対応できず精度の低下を招いていた。「月に4回変えられることで市場の変化に柔軟に対応できるようになった」と営業本部の郡山剛副本部長は話す。

 さらに需要予測の精度を向上させるために取り組んでいるのが、特売情報の入力の徹底だ。従来は、戦略箱に入力する商談情報に漏れが生じていたのが実情だ。そこで、需給統括部を中心に各支店を回り、現場の営業担当者に啓もう活動を展開している。その結果、昨年40~50%だった起票率(特売の実施に対する情報入力の割合)が5月には90%を超えるまでになった。「夏までには100%起票するように意識改革を促していきたい」(郡山副本部長)と意気込む。