CS企画部の加藤淳部長(右)と中村智マネジャー。2人が手にしているのがサンクスカードだ
CS企画部の加藤淳部長(右)と中村智マネジャー。2人が手にしているのがサンクスカードだ
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 日本航空が信頼回復に向けて取り組んでいる風土改革が第二段階に入った。同社は、昨年から風土改革に取り組んできた。これまで重点的に取り組んできたのが、「改善を提案すれば実行に移せる」という意識を植え付けることである。社員からの改善提案専用の「CS向上予算」を設置。提案から2週間で可否を決定し、実行に移す仕組みを構築してきた。従来は、いくら提案しても予算がないことを理由に実行に移せないということが多く、社員のなかで提案に対する志気が下がっていた。しかし、CS向上予算を設置後は提案件数が増加。1年で300件を超える提案が寄せられた。

 改善の風土を定着させるために、第二段階の施策として、部門間の連携を強化する。5月に「サンクスカード」と呼ぶ名刺大のカード10万枚を作成し、社員に配布。社員同士で、このカードをやり取りすることで、「褒め合う風土」の醸成を目指す。この取り組みを通じて、部門を超えたコミュニケーションの活性化を期待する。

 今回の取り組みの背景には、「安全アドバイザリーグループ」からの提言があった。同グループは、昨年相次いだ安全問題の改善のために発足。ここで、組織間やグループ会社間の意識の壁があると指摘された。

 飛行機を運航するには、客室・地上・整備など多くの部門が携わっている。しかし、空港部門や客室など組織の壁が厚く、部門を超えたコミュニケーションが欠けていた。さらに、昨年頻発した安全問題で、「現場の担当者が萎縮している」(CS企画部の加藤淳部長)という問題もあった。現場の志気を高めてサービスの質を向上させるには、褒め合う風土が重要だと判断した。

 サンクスカードは、ほかの社員に感謝の意を表する際に手渡す。具体的な活用例として、機長が地上で機体を整備している担当者へ感謝の意を表す際や、客室乗務員の心遣いに感動したときに手渡すといったことを想定している。全社を挙げて、感謝の気持ちをあらわす運動を展開することで、部門間の意識の差をなくすことを目指している。

 さらに6月には、全社員が問題意識を共有するために、1年間かけて集めた現場の声を冊子にまとめた。これまで、CS企画部のメンバーが中心となって月に1~2回現場を回り、改善に関する議論を繰り返してきた。「回を重ねるごとに重複した意見や提案が出てきた。これらを全員で共有することで同じ価値観だということを理解してもらいたい」(CS企画部の中村智マネジャー)という。