国内販売本部の深澤潔販売企画部長(左)と、営業プログラムのリーダーである国内営業企画本部の福井武司営業改革室長(右)
国内販売本部の深澤潔販売企画部長(左)と、営業プログラムのリーダーである国内営業企画本部の福井武司営業改革室長(右)
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 三菱自動車工業が販売会社の営業力強化に乗り出した。「顧客データベース」など5つの営業強化プログラムを提供するもので、販売会社はこれらを活用して収益向上の土台作りを進める。

 既に今年1月から3カ月かけて山梨三菱自動車販売(山梨県甲府市)に同プログラムを試験導入した。この成果を、全国の直系の販売会社30社の社長を集めて披露したところ、ほぼ全社が賛同。6月中に9社に対してプログラムを提供し、今秋からはそのほかの販売会社へも広げる。

 リコール隠しなどの問題で販売台数を大きく落とした三菱自動車は、販売台数の回復を図っている。2004年の国内販売台数は22万7000台。今年度は30万2000台を目標に掲げる。目標達成のために、特別仕様車や新型車の投入を予定しているが、商品力に加えて、営業現場の強化も不可欠と判断した。国内販売本部の深澤潔・販売企画部長は、「自信を無くしてしまっている営業の現場に、積極性を持たせたい」と意気込む。

 5つの営業強化プログラムは、「顧客データベース」のほか、「サービス」「中古車」「新車」「経営」に関するものだ。

 例えば経営プログラムでは、営業担当者が「数字」を意識できるように、新しい指標を作る。営業現場は新車販売には力を入れるが、販売後の定期点検や保険の取り扱いなどの収入源はおろそかになりがち。そこで営業担当者の意識改革を促すために、各営業担当者がどの程度利益に貢献しているのか「みなし利益」をつかめる体制づくりを支援する。

 顧客データベースプログラムは、既存のデータベースにある顧客情報のメンテナンスだ。各販社は、2000年に稼働した顧客管理システム「Medi@(メディア)」を活用して顧客情報を管理していた。ただし、2004年の品質問題の対応に追われたことに加え、営業担当者の退職が相次いだことから、情報の更新が徹底できていないなかった。「よくても1年分、中には5年分のデータのメンテナンスが必要。一気に100点満点にはできないが、3カ月で70~80点ぐらいの状態にはしたい」と深澤部長は話す。

 これまでの販売会社強化策と大きく異なるのは、三菱自動車から営業強化プログラムとともに「トレーナー」も送り込む点だ。今回試験導入した山梨三菱自動車には、三菱自動車から13人を派遣し、3人ずつ分かれて各テーマごとに販売会社の担当者と取り組んだ。

 従来の強化策は“マニュアル”を配るだけだった。そのため、販売会社によって取り組み度合いに差が生じていた。また、営業店長といった役職別に集合研修を実施していたものの、研修の場では刺激を受けても、販売会社に戻ってからは販社の社長が積極的でなく強化策が頓挫してしまうことがあったという。

 ここで課題となるのはトレーナーの人材不足。現在は13人しかいないため、すべての販売会社へ同時に送り込むことはできない。そこで、当面の9社への対応では、3人1組となり、それぞれの組が2社を担当する体制にした。さらに、販売会社から営業強化策の推進担当者を集めて2泊3日の研修を実施、トレーナーを養成し始めている。販売会社の担当者を改革を引っ張るリーダーに育てることで、改革のスピードアップを図る。