日立製作所は、RFID(無線ICタグ)を活用する業務ソリューションを体系化した「日立トレーサビリティ・RFIDソリューション」を、6月20日から提供すると発表した。業種ごとや業務ごとに125のソリューションメニューをあらかじめ用意することで、システム導入までの期間を従来より3割短縮できるという。

 日立は、今回のサービスを契機にRFID事業を本格展開し、2010年度末までに累積で売上高1800億円の達成を目指す。市場を拡大するために、サービス提供と並行して、パートナー企業によるソリューション提供を後押しするフォーラムも組織する。まず6月末に日立グループの20社が集まって、「日立トレーサビリティ・RFIDフォーラム」を結成。続いて、グループ外のパートナー企業にも、参加を呼びかけていく予定だ。

 今回の新サービスは、これまでの構築実績などを元に、「食品」「アパレル」「自動車」など9つの業種を対象に合計100種類のメニューを用意した業種別のソリューションと、業種を問わず使える25種類の業務別ソリューションで構成する。例えば、食品業界向けでは「豚個体管理」「生鮮品温度管理」など7つのメニューを、電子機器製造業向けには「プリント版製造動態管理」「組み立ての生産進ちょく管理」など23のメニューを用意。業種別のメニューは「入退室管理」「設備管理」などをそろえた。

 各メニューでは、顧客の業務内容や要望に応じてシステムを構築していくが、過去の実績を元にした“ひな型”を用意することで、業務分析やシステム構築にかかる時間を短縮。導入までの期間は3割短くなるという。また、過去の実績で蓄積したノウハウは、フォーラムに加盟したパートナー企業とも共有し、日立のソリューションの外販を後押ししていく。

 今回のサービスに用いるRFIDは、既に製品化している2.45GHz帯の「ミューチップ」や、13.56MHz帯のICタグのほかに、日立が今年中に量産を始めるUHF帯のICタグも加える予定だ。UHF帯のICタグは通信距離が最大5m程度と長い点が最大のメリット。課題だった価格も、「月間1億個の量産時に、チップにアンテナを付けた半製品を5円で提供できるメドがついた。ラベル状やカード状にしたタグの製品価格は10円~30円になるだろう」(トレーサビリティ・RFID事業部の井村亮事業部長)という。

 日立の試算によると、2010年度におけるRDIDの市場規模は「固く見て世界で1兆~2兆円で、このうち国内は4000億円」(井村事業部長)。日立は、2010年度単年度で800億円、同年度末までの累積で1800億円の売上高を達成する計画だ(海外分を含む)。つまり、2010年度時点で「10%台後半の国内シェアを獲る」(井村事業部長)もくろみである。