インターネット接続事業者のぷららネットワークスは6月13日,ファイル交換ソフト「Winny」の通信を遮断するサービスを提供すると発表した。同社のBフレッツ対応サービス向けに提供しているセキュリティ・サービス「ネットバリアベーシック」に,「Winnyフィルタ」機能を追加する。同サービスのユーザーは標準でWinnyの通信が遮断されるが,希望すれば解除できる。提供開始は7月19日を予定する。

 ぷららは3月16日にもWinnyの完全規制を発表したが,総務省から「通信の秘密の侵害に当たる可能性がある」として待ったをかけられた。その後,総務省から以下の五つの方向性が提示されたという。(1)ユーザーがWinny通信のフィルタに一度同意しても,随時設定を変更できること,(2)ユーザーがフィルタリング・サービスに同意しているかの有無に関係なく,他サービスと提供条件が同一であること,(3)フィルタリング・サービスの内容が明確に限定されていること,(4)通常のユーザーであれば,Winny通信の遮断が合理的であると推定されること,(5)ユーザーに対してWinnyの遮断について事前に十分に説明すること,である。

 今回発表したサービスはこれらの条件を満たしたものになっており,「総務省からも問題ないという見解をもらっている」(同社)。具体的に(4)は,5月末に同社のユーザーに対して電話アンケートを実施。Winny通信を遮断するサービスの必要性を聞いた結果,「必要」「どちらかというと必要」とする回答が,得られた約2000件の回答の8割を超えたという。(5)は,電気通信事業法の第二十六条に定める「提供条件の説明」に基づき,約款だけでなく,個々のユーザーに十分な説明を行う必要がある。これに対してはWebサイトにおける告知だけでなく,個々のユーザーに対してメールで通知する。

 同社はWinnyの完全規制を発表した当初,その目的を「インターネット上の情報漏えい,特にWinnyによる個人情報の二次流出の防止」としていた。そのため,今回のサービスではその目的を完全に達成したとは言えない。とはいえ,「できるところから始めなければ被害が続くだけ。総務省に相談した結果,現状で実現できる精一杯のところだった。引き続き,より良い方法を検討していく」(同社)としている。

 このほか,ぷららは企業向けに「ネットワークスポンサー制度」と呼ぶサービスを9月に開始する予定であることも明らかにした。Winnyを介した情報漏えいが,企業内ではなく,自宅パソコンを介して起こっていることに対応したもの。企業がぷららと契約を結び,自社の社員の自宅でぷららが提供するWinnyの遮断サービスを利用させる。同サービスの場合,社員がWinnyの遮断を解除することはできない。また企業は,社員のサービス利用料の最低5%以上を負担する必要がある。