ソーシャルサーチを構成する要素。ソーシャルネットワークで得られる人と人とのつながりを示す情報、他のサービスの利用状況などがある
ソーシャルサーチを構成する要素。ソーシャルネットワークで得られる人と人とのつながりを示す情報、他のサービスの利用状況などがある
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「Webサーチの次はソーシャルサーチだ」と語る検索事業部の井上俊一事業部長
「Webサーチの次はソーシャルサーチだ」と語る検索事業部の井上俊一事業部長
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メインの検索エンジンをYSTに切り替える前と後での利用者数の推移。ネットレイティングスが調査したもの。ディレクトリ型検索の利用者は減少したものの、一定数のユーザーに支持され続けている
メインの検索エンジンをYSTに切り替える前と後での利用者数の推移。ネットレイティングスが調査したもの。ディレクトリ型検索の利用者は減少したものの、一定数のユーザーに支持され続けている
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 ヤフーは2006年6月13日、検索事業に関する記者説明会を実施した。検索が次に進むべき方向は「ソーシャルサーチ」であると述べ、関連したサービスを年内にも開始することを明らかにした。ソーシャルサーチとは、世間の評判や意見、ユーザーの趣味や嗜好を反映させた検索のこと。第一弾は、「ソーシャルブックマーク関連のサービスになる予定」(マーケティング本部長の大蘿淳司氏)。自分や他のユーザーが登録したブックマークを反映させることで、個人に適した検索結果を提示する。

 ヤフーが現在メインの検索エンジンに据えているのは、米ヤフーが開発した「Yahoo Search Technology(YST)」。クローラーと呼ばれるプログラムがかき集めてきたWebページを、リンク解析などに基づいてランク付けする。ソーシャルサーチは、YSTのような検索エンジンの次に必要となる技術だという。例えば現在の検索エンジンは、「女性が乗りやすい車は?」のように、答えが一意に決まらない、評判や意見に基づく情報の検索はあまり得意ではない。またユーザーの好みは考慮せず、とにかく数が多い情報を上位に表示することしかできない。だから自動車のゴルフを探したくても、スポーツのゴルフに関する情報が出てきてしまう。さらに、キーワードを入れなくては何も表示されないことも欠点の一つだ。

 そこで、Webから収集したデータ以外にもさまざまな情報を利用してユーザーに適した検索サービスを提供しようというのがソーシャルサーチである。具体的には、Webページ以外のさまざまなコンテンツや、ソーシャルネットワークによって得られる人と人とのつながりの情報、オークションなど他のサービスの利用履歴などを検索に利用する。さらに、ユーザー個人の特性に応じて検索結果のランキングをする「マイランク」機能を実現することで「キーワードを入力しなくても興味のある情報が表示される、プッシュ型の検索サービスを実現できる」(検索事業部の井上俊一事業部長)。

旧来のディレクトリ型検索にも根強い人気

 その一方で、YSTの導入以前にメインの検索エンジンとして使われていた、ディレクトリ型の検索エンジンにもいまだ根強い人気があるという。ディレクトリとは、サーファーと呼ばれる専門家がWebサイトを巡回し、信頼できるページをカテゴリ別に登録したもの。同社は2005年10月まで、この検索エンジンをデフォルトで利用していた。YSTに切り替えた直後は利用者数は減少したものの、減少幅は月間で数百万人にとどまった。今ではディレクトリ型検索を実行するにはわざわざそのためのメニューを選択する必要があるが、月に1200万人前後のユーザーがディレクトリ型検索を好んで使い続けている。

 各国のヤフーのサービスの利用状況と比較しても、これは日本特有の現象だという。その理由として、「現在でもディレクトリをこまめにメンテナンスしていること」(検索事業部 サーファー部の関裕司部長)を挙げる。数十人に及ぶ担当者がさまざまなWebサイトを見て回り、毎日数百に及ぶページを新たに登録している。サッカーのワールドカップのように話題のイベントがある時期には、各選手の情報ページなどユーザーが必要としている情報を人手で探し、選別・登録している。

 また「ユーザーの裾野が広がったことも、ディレクトリ型検索のニーズを増やしている要因」(大蘿マーケティング本部長)。初心者ユーザーには、自分でたくさんの情報を見つけるよりも、信頼の置ける数サイトを教えてくれる方がよい、という人が少なくない。初心者ユーザーは今後もまだまだ増え続けると予想しており、ディレクトリ型検索は今後も必要とされ続けるとの見通しを示した。