ヴイエムウェアは6月末までに,サーバー仮想化ソフト・スイート製品「VMware Infrastructure 3」を出荷する。大きな特徴は,複数のサーバーが稼働する環境で,仮想サーバーを効率的に配置・運用する機能を強化したこと。「データセンターなどでは,この製品を使うことで運用が容易になる」(米VMwareのデータセンター/デスクトップ・プラットフォーム製品担当副社長 Raghu Raghuram氏)と説明する。

 複数サーバーが稼働する環境での管理を効率化するため,VMware Infrastructure 3では,仮想サーバー・ソフト「VMware ESX Server」や基本管理ツールの強化以外に,新たに三つの管理製品を加えた。(1)VMware Distributed Resource Scheduler(VMware DRS),(2)VMware High Availability(VMware HA),(3)VMware Consolidated Backupである。

 (1)のVMware DRSは,複数のサーバーを論理的なグループ単位で管理し,利用可能なプロセッサやメモリーを動的に割り当てるためのソフトウエア。複数の物理サーバーのうちの特定の何台かを,特定部門の仮想サーバー群に割り当てるといった管理ができる。そして,その部門でプロセッサやメモリーの使用率が高くなった場合,別の部門に割り当てられていた使用率の低いサーバーに仮想サーバーを動的に移せる。これまでのVMwareでは,物理サーバー間で仮想サーバーを動的に移す機能「VMotion」はあったが,運用担当者が手作業でサーバーを割り当て直す必要があった。

 (2)のVMware HAは,VMwareで管理されている物理サーバーに障害が発生したとき,障害が発生したサーバーで稼働していた仮想サーバーを自動的に別の物理サーバーで起動させるためのソフトウエア。仮想サーバーを改めて起動して障害から回復する。

 (3)のVMware Consolidated Backupは,仮想サーバーで使われているデータを,保護対象とは別のサーバーで集中的にバックアップできるようにするソフト。保護対象サーバーの負荷が減るほか,仮想サーバー内のデータをファイル単位できめ細かくバックアップできる。VMwareでは,これまでもSAN(Storage Area Network)を使って,仮想サーバーのデータを集中的にすべてバックアップできた。しかし,仮想サーバーで使うデータのうち,ある特定のファイルだけのバックアップを取ることは,できなかった。

 以上の3製品に加えて,VMware Infrastructure 3では,ストレージを仮想化して管理するソフトウエア「VMware VMFS」という製品も新たに加わっている。

 VMware Infrastructure 3では,これまで提供してきた仮想サーバー・ソフト「VMware ESX Server」の機能も強化した。また,仮想サーバーをマルチプロセッサ対応にする「Virtual SMP」の機能を強化した。これまでは最大2個のプロセッサに対応していたが,新製品では最大4個のプロセッサに対応できる。

 VMware Infrastructure 3は基本的に,複数のソフトウエアをセットにして販売する。パッケージの内容は,用途に合わせて3種類ある。具体的には(A)中小企業や部門で使うことを想定し,ESX Serverと管理用ソフト「VirtualCenter」のエージェント・ソフトと制限付きVMFSのみの「VMware Infrastructureスタータ」,(B)スタータに含まれるソフトに加えてフル機能のVMware VMFSと,Virtual SMP機能が利用可能な「VMware Infrastructureスタンダード」,(C)スタンダードに含まれるソフト/機能に加えて(1)のVMware DRS,(2)のVMware HA,(3)のVMware Consolidated Backupの各ソフトと,VMotion技術が利用可能な「VMware Infrastructureエンタープライズ」である。

 市場推定価格は,管理対象のサーバーに搭載されているプロセッサの数が2個の場合,(A)が16万円,(B)が60万円,(C)が92万円となる見込みである。