富士通の黒川博昭社長は、2005年末に相次いだ東京証券取引所のシステムトラブルと誤発注の問題について、「(東証からは)補償を求める話は来ていない。仮にあったとしても、契約内容を超えた負担には応じられない」との見解を明らかにした。経営方針説明会で記者の質問に答えた。

 富士通が東証に納めた取引システムを巡っては、2005年11月に全銘柄の売買が停止する大規模なシステム障害があったほか、12月にはみずほ証券が大量の誤発注をした際に、システムの欠陥から取り消しができなかったために損失が407億円に拡大するトラブルが起きている。11月のシステム障害時には、東証の幹部が「富士通に損害賠償も辞さない」と発言したほか、12月の誤発注トラブルに関しては、東証の西室泰三社長が、みずほ証券との損失負担の協議次第で、富士通にも負担を求める可能性に言及していた。

 しかし黒川社長は、黒川社長は2つのトラブル共に、東証からは損害賠償や損失額の分担を求める話は来ていないと明言。また、仮に要求があっても、「あくまで契約書で取り決めた瑕疵(かし)担保責任の条項に基づくべきで、契約を超えた負担はできない」として、2件のトラブル共に、契約上は富士通に損害に対する補償責任が生じないとの見方を示した。

 ただし、2件のトラブルのうち誤発注に関しては、東証とみずほ証券の協議が長引いており、改めて富士通への責任問題に飛び火する可能性もある。一部報道によると、407億円の損失を被ったみずほ証券は東証に大部分の負担を求めているが、東証はこれを拒否しており、協議は平行線をたどっているという。