合同・全国研究大会におけるパネルディスカッションの模様
合同・全国研究大会におけるパネルディスカッションの模様
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 経営情報学会、オフィス・オートメーション学会など4学会は6月4日、東京都八王子市の中央大学で開催した「合同・全国研究大会」において、「内部統制とIT」をテーマにした研究発表とパネルディスカッションを行った。

 このなかで大阪成蹊大学助教授の石島隆氏(公認会計士)は、「米国企業における内部統制の『重要な欠陥』事例を分析すると、財務・会計システムへのアクセス管理に関連する不備が目立つ。ITの内部統制が不十分な企業は、IT以外の面でも不備が目立つ傾向がある」と指摘した。

 大阪工業大学大学院の島田裕次氏(東京ガス監査部)は、「会計や法律の専門家の間でも、『IT統制』の概念が明確になっておらず、金融庁の『基準案』についても様々なとらえ方がある。さらに、会社法が求める内部統制と、日本版SOX法(金融商品取引法)が求める内部統制では範囲が違う」と、実務上の対応の難しさを指摘した。

 中央大学研究開発機構教授の大井正浩氏は、「内部監査をすれば不正・不備がないことを保証できるわけではないが、少なくとも内部統制のレベルを上げることはできる」と、内部監査の重要性を語った。

 4学会は今秋をメドに、日本版SOX法への対応が必要になる産業界に向けての提言を報告書としてまとめ、広く発表する予定である。早稲田大学大学院教授の平野雅章氏は、「日本版SOX法では財務報告にかかわる内部統制に主眼があるが、財務報告のためだけにコストがかかる内部統制整備に取り組むべきではないというのが、我々の共通理解だ」と話した。