アプリケーション・プラットフォームおよび開発支援ツールを担当するSteven Guggenheimerゼネラル・マネジャー
アプリケーション・プラットフォームおよび開発支援ツールを担当するSteven Guggenheimerゼネラル・マネジャー
[画像のクリックで拡大表示]

 マイクロソフトは6月6日,チームを対象とした統合開発環境の統一コンセプトである「Visual Studio Team System」の中核に当たるコラボレーション・サーバー「Visual Studio 2005 Team Foundation Server」を正式発表した(出荷開始は6月1日)。これにより,同コンセプトによる一連の製品群が出そろった。「チーム開発」を推し進める米MicrosoftのSteven Guggenheimerゼネラル・マネジャー(アプリケーション・プラットフォームおよび開発支援ツール担当)に,同製品のインパクトや利点を聞いた。インタビューの要旨は以下の通り。

 今回発表したVisual Studio 2005 Team Foundation Server(以下,VSTFS)は,Visual Studio Team System(以下,VSTS)の中核的な製品となる。VSTSの製品としてはこれまで,アーキテクト向けの「Visual Studio 2005 Team Edition for Software Architects」,開発者向けの「同Team Edition for Software Developers」,テスト担当者向けの「同Team Edition for Software Testers」,およびこれら3製品を統合した「同Team Suite」を出荷してきた。VSTFSはこれらの製品をクライアントとして,設計や開発,テストといったソフトウエア開発ライフサイクル(開発プロセス)を通じて発生する様々な成果物や情報などを管理するサーバーである。

 ソフトウエア開発の作り手は,個人からチームへと大きく様変わりしている。低コスト,短納期に加えてソフトウエアの品質要求も高まるばかりである。もはや一人の開発者がすべてのソフトウエアを作るわけにはいかない。チームのメンバーが協調しながらプロジェクトを進める必要がある。

 多くのメンバーがかかわる以上,作業の手順をルール化する開発プロセスの重要性が増している。そして,開発プロセスがきちんと機能しているかどうかを可視化する仕組みも重要である。従来は,開発生産性と言えば,プログラミングの工数を指す場合が多かった。この工数をどれだけ短くするかに向けて,我々もツールを開発してきた。ところが現在は,設計やテストなど,幅広い開発プロセスの工数を短縮しなければ全体の生産性は上がらない。品質についても,コード・レベルにとどまらず,設計ドキュメントやテスト仕様も品質を管理して高めていかなければならない。

 この「開発プロセス全体の管理」という点に着目し,VSTSの中核となるVSTFSを開発した。VSTFSでは,様々な情報を一元的に管理してメンバー同士のコミュニケーションを促進するほか,モデルやコードなどの成果物を関連づけて格納し,構成管理や変更管理を実施できる。これにより,あるモデルを変更した場合にどのコードに影響が及ぶのかを特定できる。各種情報や成果物は,SQL Serverに格納するため,検索やトラッキングもしやすい。SQL Serverのレポーティング機能を使って,管理資料を自動的に生成することも可能だ。

 プロジェクトマネジメント・ツールという観点では,Microsoft Projectがある。しかし,同ツールは使いこなすのが難しく,まだまだ浸透していないのが現状だ。そこでVSTFSでは,同製品の一部の機能をサブセットとして実装した。タスク管理や進捗管理などをVSTFS上で実現できる。


課題はチームへの「開発プロセス」の定着

 他のベンダーにも同様の製品はある。だが,開発支援ツールであるVisual Studio 2005 Team EditionやSQL Serverとのシームレスな連携は真似できない。統一的なユーザー・インタフェースも,使い勝手の面で効果が大きいだろう。

 最大の課題は,標準的な開発プロセスを持たない企業が多いことだ。開発の手順が組織や人によってバラバラであり,メンバー同士のコミュニケーション不足を生む。その結果,品質や生産性の低下を招いている。これでは,VSTFSの機能を使うのが難しい。

 そこで当社としては,二つのアプローチを提案していく。一つは,とりあえずVSTFSを使うことで,開発プロセスを理解してもらう方法だ。VSTFSには,あらかじめ標準的な開発プロセスやアジャイル型開発プロセスのひな型(プロセス・テンプレート)を持ち,このプロセス・テンプレートに従って設計や開発,テストなどの作業を進める。慣れるまで時間がかかるかもしれないが,VSTFSを使ううちに,それらの開発プロセスが組織内に定着していくことになる。

 もう一つは,パートナーが提供するVSTFS向けの開発プロセスを利用する方法である。今回の発表では,富士通関西システムズの「SDAS for .NET」や日本ユニシスの「LUCINA for .NET」が発表された。これらの開発プロセスにはVSTFS用のプロセス・テンプレートがある。これを利用して,組織内の開発プロセスを整備していくのである。(談)