「企業の内部統制の整備は、今日から始まる」。青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科の八田進二教授は、金融商品取引法(金取法)が参議院本会議で可決・成立したことにこうコメントした。八田教授は、内部統制の評価・監査基準などを作成している企業会計審議会内部統制部会の部会長を務めている。コメントは日本ユニシスが6月7日に開催したイベントの講演で語った。

 金取法には投資家保護を目的として、企業の情報開示の透明性を高めるため、上場企業に「内部統制報告書」の作成を義務付けた条文がある。内部統制部会は、内部統制報告書を作成するための評価や監査の基準案を作成。いわゆる日本版SOX法は、金取法と基準案の両者を合わせたものである。

 金取法自体の施行は来年夏の予定だが、内部統制報告書の作成は「2009年3月以降に終了する決算期から適用」と約2年先延ばしになっている。これについて八田教授は「準備期間を考慮してのことだろう」と説明。ただし「今年5月に施行された新会社法も内部統制の整備を求めている。もはや企業は、内部統制の整備から後戻りすることも、先送りもできなくなった」と断言する。

 「金取法は米国のSOX法のように企業に負担を強いる法律ではない」と八田教授は強調する。米国と比べ、リスクの評価方法や監査方法を簡素化することで企業の負担を軽くしたと説明する。米国は内部統制の整備にかかる企業の負担が重すぎたことから、中堅中小企業の内部統制の整備は現在、免除されている状態だ。八田教授は、「米国のように企業規模で適用時期が異なるのは不公平。日本では企業負担を軽くした分、企業規模に関係なく適用されるべきではないか」との見解を示した。