登録会員が100万人を突破したファンケルのネット通販サイト「FANCL online」
登録会員が100万人を突破したファンケルのネット通販サイト「FANCL online」
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ファンケルが化粧品や健康食品のインターネット販売の拡大を急いでいる。

 現在、同社の通信販売事業に占めるネット販売比率は27%。残りの73%はカタログを見ながら電話で顧客が注文する従来型の通信販売だ。この比率を3年後の2009年3月期末までに37%:63%とし、ネット通販の比重を現在よりも10ポイント高める計画だ。

 販売チャネルとしての成長が著しく、利益率も高いネット販売の比率を高めることで、2009年3月期には過去最高の売上高と経常利益を狙う。

 ファンケルのネット販売の売上高はここ数年、前年比約20%増という高い伸びを示している。1997年8月に開始したネット通販サイト「FANCL online」の登録会員数は、今年4月初旬に100万人を突破。年間の売上高も昨年度は大台の100億円を超えた。

 会員登録100万人を記念して実施しているポイントアップやプレゼントのキャンペーン効果もあり、この5月は月間売上高が10億円を超え、春の月商としては過去最高を記録。通年でも昨年末の過去最高に匹敵する水準まで高まった。キャンペーンによる一時的な売り上げ増とはいえ、ネット販売比率は瞬間的に35%まで跳ね上がり、3年後の計画達成に弾みをつけた。

 ファンケルはネット通販の強化策として、人員とシステムを強化する。今春、ネット通販の担当者を16人まで増やしたのに続き、今秋までにシステム増強を完了する。ネット通販用のシステム開発には数億円を投じる予定だ。

 インフラを強化したうえで、ネット通販に新サービスを追加する。例えば、ネット上で実施できる「肌診断」や「健康診断」などのページの開設を検討している。

高騰する新規顧客獲得コストを店舗で補う

 ファンケルには電話とネットの通販のほかに、デパートなどに入居する203カ所の店舗での商品販売という大きく3つの直接販売チャネルがある。このなかで最も利益率が高いのがネット通販だ。だからこそ、ファンケルはネット通販の拡大を急いでいる。

 しかし一方でファンケルは、同じくこの3年で店舗数も現在の1.5倍に増やす計画だ。2009年3月期末までに300店体制を築く。ネットと店舗の両方を同時に拡大する戦略である。

 ファンケルは、2000年前後のネット通販ブームのころに叫ばれた「クリック&モルタル」戦略が、今後はその反対の「モルタル&クリック」に変わっていくと見ている。ネットと店舗で相乗効果を上げていく狙いそのものは変わらないが、クリック&モルタルでは主にネットの顧客を店舗に誘導する方向性が見受けられた。それに対し、ファンケルが考えるモルタル&クリックでは、店舗の顧客を利益率が高いネットに誘導することを意味する。

 ファンケルでネット通販を指揮する保坂嘉久・通信販売営業本部ネット通販営業部長は、「最近はネット広告の価格が高騰してきており、ネット上での新規顧客獲得コストが年々増加傾向にある」と指摘する。そのため、200以上ある店舗網を有効に使い、「店頭でネット販売の告知や顧客の勧誘をしたほうが効率的なケースが見られるようになってきた」という。

 店頭には訓練を受けた美容部員が常時待機しているので、顧客と直接コンタクトを取って顧客に合った商品を薦められるメリットがある。その後で「最終的な商品の注文や2回目以降のリピート購入には手軽なネット通販を利用してもらえればいい」

 ここで注目したいのは、ネット通販の顧客層とデパートなどに入居するファンケル店舗に来る顧客の年齢層がほぼ重なっている点だ。従来からあるカタログ通販の顧客の場合、最も多い年齢層は35~39歳の女性だが、一方でパソコンを使ったネット通販はそれより5歳若い30~34歳の層、携帯電話を使った通販はさらに5歳若い25~29歳の層と、ネット通販は中心顧客が典型的なF1層(20~30台前半の女性)で占められる。

 こうしたネット通販での年齢構成は、実は店舗の来店客とぴったり一致する。だから、店舗で顧客に商品を紹介し、ネット通販に誘導するのは理にかなっているというわけだ。

 ファンケルは2007年4月の稼働を目指し、ERP(統合業務)パッケージを使って基幹系システムを刷新するプロジェクトも同時に進めている。今後3年で、システム刷新に60億円をつぎこむ。システム稼働後にはネット通販の新システムとも連動し、バックエンドの受発注処理をより迅速に実行する。