アビーム コンサルティングは6月6日、国内大手企業のCIO(最高情報責任者)やIT部門長に対するアンケート調査の結果を発表した。IT投資が「期待以上」に成果を発揮したとする企業は1社もなく、「期待通り」という回答も30%にとどまった。この調査は、同社が今年2月から3月にかけて、東証一部上場企業を中心とする国内大手企業約2000社のCIOやIT部門長に対して実施し、141社から回答を得た。

 アビームの木村公昭 経営研究部ディレクターは、「2年前に実施した調査とほぼ同じ結果であり、成果を上げていない企業が状況を改善するのは難しいことが見て取れる」という。IT投資の目的別で見ると、「売り上げの増加や製品・サービスの向上、ビジネスモデルの実現」という目的の場合、「期待以上」もしくは「期待通り」と回答した企業が17%で最も成果が低くなっている。

 この調査では、経営トップのIT投資への関与度、同じく利用部門の関与度、IT部門のケイパビリティ(提供能力)の3分野についても質問をしている。「期待通り」と回答した企業グループは、そうでない企業グループに比べて3分野のスコアがいずれも高い。3分野のスコアがすべて高い場合は、IT投資効果が「期待通り」と回答した企業が68%に達するが、反対に3分野ともにスコアが低い場合はその割合が7%にまで下がる。

 3分野の中でも特に影響が大きかったのは、やはりIT部門のケイパビリティだ。IT部門のケイパビリティが高い企業のうち、「期待通り」と回答した企業は53%となっている。経営関与度が高い企業では同38%、利用部門の関与度が高い企業だと同44%である。

 今回の調査結果に対して、木村ディレクターは、「多くの企業では、部分最適の考えや曖昧な責任体制などの問題があり、IT投資の成果が上がっていない。IT部門だけに任せず、経営層、利用部門、IT部門すべてが当事者意識を持って協力する“協働型IT経営”の実現が求められる」と語る。