旅行のクチコミサイト「フォートラベル」のトップ画面
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フォートラベルの津田全泰社長(右)と請川貴之取締役(左)
フォートラベルの津田全泰社長(右)と請川貴之取締役(左)
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 同サイトは、大手旅行代理店などが運営する「予約サイト」とは趣が異なり、一般ユーザーの「口コミ」を主要なコンテンツにすえた「旅行のクチコミサイト」。2004年1月のサイト開設以来、閲覧者数は伸びてきたが、今年5月に月間閲覧者数が初めて200万人を超える見込みだ。トラベラー会員と呼ばれる無料の登録者の数も、6月初旬で約1万7000人となった。

 旅行の口コミサイトはいくつかあるが、調査会社ネットレイティングス(東京・渋谷)の調べによると、同サイトへのリーチ率(インターネット利用者に占めるユニーク・ユーザー数)は1.88%(今年1月時点)と、同カテゴリーにおけるランキングで第1位となった。

 このサイトを運営しているのは、カカクコムの子会社であるフォートラベル(東京・文京)だ。

 津田全泰(つだ・ぜんたい)社長は学生時代にネットビジネスを志し、大学卒業前に楽天の前身であるMDMに入社している。同社8人目の正社員として楽天トラベルの立ち上げなどに携わった。2003年3月に楽天を退職し、旅行会社で添乗員をしていた請川貴之氏(現取締役)と同年4月にフォートラベルを設立。翌年1月にサイトを開設している。独立については、「自分自身でサービスを立ち上げて世に出してみたかった。楽天はどこまでいっても三木谷さんの会社だったから」と話す。

 フォートラベルは津田社長の古巣である楽天トラベルとは異なり、ホテルや旅館と直接契約するわけではない。サイト内にインターネット上に散らばる旅行情報を収集・整理することで旅行者と旅行代理店や航空会社を引き合わせる。収入はこうした旅行関連企業からの広告に頼っているが、旅行者の利便性を重視しており、広告を出稿しない企業の予約サイトも紹介している。そのため情報提供元となっている旅行代理店の数は660にも及び、情報の豊富さから旅行者の人気を呼んでいる。

 旅行好きの支持を集めるのは情報の豊富さだけではない。昨今流行の「ウェブ2.0」の思想を取り入れたサイトの作りにある。ウェブ2.0とは従来の情報を一方的に提供するのではなく、多数のユーザーが参加することで情報とサービスの質が高まるようなサイトの仕組みを指すものだ。ブログ機能はその典型だ。3年前にフォートラベルを設立した当時はブログもウェブ2.0という言葉もなかったが、「旅行者のことを第一に考えたサイトを作りたかった」(津田社長)という。

 こだわったのが登録者が自らの旅行記を記すことができるマイページ機能。旅行者の中には自らの体験や情報、デジカメで撮影した画像を公開したい人は少なくない。登録者のマイページでは旅行記を簡単に更新でき、画像を掲載することができる。画像はパソコンの壁紙やメールによるポストカードの作成にも使える。またマイページには日本地図と世界地図があり、訪れた国や地域の色は変わる仕掛けになっている。行ったことがない地域に出かけようというモチベーションを喚起する仕掛けになっている。

 フォートラベルは2005年1月にカカクコムの子会社となった。津田社長は「フォートラベルでもツアー商品の価格比較を行っているので親和性が高かった。カカクコムのおかげでアクセス数は増えたし、営業をする際でもずいぶん助かっている」と話す。

 同サイトの月間閲覧者数は200万人を超えたが、津田社長の目標は「当面は今期中に260万を達成すること」。そのために、ブログ機能とコミュニティー機能の強化を図る。前者ではマイページのデザインを各会員が自由に変更できたり写真の掲載などの工程を簡素化したりするなど使いやすさを向上させる。後者では、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)のミクシィやGREEのように共通の目的や趣味を持つ会員がテーマごとに集えるコミュニティー機能を付加していく。「会員同士がコミュニケーションをより取りやすい環境を整えたい」と津田社長は語る。

 経済産業省によると、国内の旅行サービスのEC(電子商取引)市場規模は8050億円。米旅行サイトの最大手の「エクスペディア」が近い将来日本市場に参入するという報道があったばかり。「将来は自社企画のツアー商品も販売したい」と話す津田社長の挑戦はこれからが本番だ。