写真1●栃木県二宮町の総務企画課情報管理室長 海老原慎一氏
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写真2●二宮町のネットワーク構成
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写真3●日本語に関する問題の例
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写真4●二宮町職員に対するアンケート結果。不満よりも「使って慣れる」という意見が突出して多かった
写真4●二宮町職員に対するアンケート結果。不満よりも「使って慣れる」という意見が突出して多かった
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写真5●OpenOffie.org日本ユーザー会との協力
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写真6●二宮町職員からの問い合わせ件数の推移
写真6●二宮町職員からの問い合わせ件数の推移
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写真5●OpenOffie.org日本ユーザー会 可知豊氏
写真5●OpenOffie.org日本ユーザー会 可知豊氏
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 「OpenOffice.org日本ユーザー会の協力を得て,職員から寄せられた問題を解決した」---栃木県二宮町の総務企画課情報管理室長 海老原慎一氏は6月2日,LinuxWorld Conference & Expo/Tokyo 2006の講演で,同町の全職員がLinuxデスクトップに移行した経緯などを解説した(写真1)。

 二宮町は,IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施した「自治体におけるオープンソース・ソフトウエア活用に向けての導入実証」に参加し,2006年2月,同町の全事務職員のパソコン139台をWindowsからLinuxに切り替えた(関連記事)。Windowsが必要な時のために,Linuxからリモート・コントロールでWindowsマシンが利用できるようにしてあるが,基本的にはOpenOffice.org,Firefox,Mozilla Mailで日常業務を行っている(写真2)。

 Linuxで業務を行うにあたっては,当然ながら操作方法がWindowsと違う点があり,また不具合もある。例えばMacOS Xとデータのやり取りをしようとすると,Unicodeの正規化方法の違いによりファイル名の濁音,半濁音が正しく表示されなかったため,Sambaを介して接続することで解決した。またPDFファイルによっては,フォント情報が埋め込まれていないためLinuxでは読めないものもあり,リモート・コントロールでWindowsマシンを利用するなどして対処した(写真3)。

 二宮町では,Linuxへの移行直後に職員にアンケートを実施した。移行は役所が忙しい時期でもあったため「Linuxに対する不満が多いのではないかと予想していた」(海老原氏)。しかし,アンケートの結果,「機能がわからない」「Windowsに戻してほしい」という意見もあったが,圧倒的多数は「使って慣れる」という意見だった(写真4)。

 職員からの問い合わせは当初町役場内にヘルプデスクを置き,当初NECやノベルなどのベンダーの社員が常駐し対応した。また,XOOPSで掲示板を開設し,自分で情報を探せるようにもした。ベンダーだけでなく「OpenOffice.org日本ユーザー会とも協力体制を構築した」(海老原氏)。OpenOffice.org日本ユーザー会は,サイト「OpenOffice.org Q&A」を運営している。4月から本格運用を開始,OpenOffoice.orgユーザー会の鎌滝雅久氏が中心になっている。二宮町はOpenOffice.org Q&に質問を提供,OpenOffice.org日本ユーザー会のボランティアが質問に回答した(写真5)。これにより現在は問い合わせも減少(写真6)。常駐へルプデスクは解散し,問い合わせはメールで行うようになっている。

 同日LinuxWorldで講演を行ったOpenOffice.org日本ユーザー会の可知豊氏は「二宮町からは171件のヘルプデスク情報が提供され,うち93件を回答,8件は不具合でありOpenOffice.orgに報告,1件の不具合を修正した」と二宮町との協力状況を報告した(写真7)。

 例えば「文字数・行数を指定したWord文書で体裁がずれる」という質問に対し,OpenOffice.org日本ユーザー会が調査したところ,互換性が完全でないことが判明。文字数・行数を指定しないことで回避するよう回答するとともに,OpenOffice.orgコミュニティに要望として報告した。また「Calcで全シートが印刷されてしまう」という質問には,設定で回避できると回答するとともに,初期設定を変更する方法をほかのユーザーにも知らせるともに,改善要望としてOpenOffice.orgコミュニティに上げた。

 可知氏は「Q&A情報を蓄積して,OpenOffice.orgを利用しやすい環境を作るために,まず質問を寄せてほしい」と話す。「質問が増えることで,情報が蓄積できる。気軽に書き込んでほしい。そしてもし余裕があったら,回答できそうな質問に答えてみてほしい」(可知氏)。また,現在回答しているのは全員がボランティアだ。可知氏の場合,1日平均30分程度を回答にあてているという。「とはいえボランティアだけでは限界もある。もし協力していただける企業があれば,従業員の時間の一部でもいいから,OpenOffice.orgの環境を向上させるために力を貸してほしい」(同)。