写真 懇談会終了後の会見で報告する竹中平蔵総務大臣(左)と座長の松原聡東洋大学教授
写真 懇談会終了後の会見で報告する竹中平蔵総務大臣(左)と座長の松原聡東洋大学教授
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 竹中平蔵総務大臣が主催する「通信と放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇談会)は6月1日,第13回会合を開催した。今回の会合では,座長の松原聡東洋大学教授が提示した報告書案を基に議論を展開した。

 報告書案は,NTTのあり方に関して前回の骨子案よりも踏み込んだ内容になっている。懇談会がNTTの組織改革への意欲を鮮明にした形だ。

 竹中懇談会では,以前からボトルネックであるNTT東西地域会社のアクセス部門を機能分離すべきと主張してきた。しかし,前回の骨子案からは「機能分離」という文言が消え,NTT組織改革への勢いは減速したかに見えた。

 今回提示した報告書案では,ボトルネック設備(アクセス設備)の機能分離を一層強めるために,現行の会計分離の徹底に加えて,接続ルールの遵守強化を図るための体制整備,ボトルネック設備へのアクセスの真の同等性確保などの措置を速やかに実施すべきと記述。さらに,アクセスの機能分離が徹底され公正競争が促進されれば,2010年には通信関係法制の抜本的見直しを行い,NTT東西の業務範囲規制の撤廃や,持ち株会社の廃止などの措置を講じるべきと明言し,そのために必要な検討を早急に始めるべきだとした。

 持ち株会社の廃止は,すなわちNTT法の廃止を意味する。NTT法に手を付けるとなると,3~5年の期間を要すると言われる。2010年に間に合わせるためには,すぐにでも検討を始めなければ間に合わないというわけだ。

 懇談会終了後の会見で松原座長は,「NTT改革の方向感は構成員で一致している。若干の文言修正をして次回会合で固める」考えを明らかにした(写真)。政府は,2010年のブロードバンド・ゼロ地域の解消と2011年の地上波放送のデジタル化の完了という二つの政策目標を掲げている。これを踏まえて報告書案に,“2011年は完全デジタル元年”という文言を持ち出した。松原座長は「(2011年に間に合うように)有効で公正な競争ができる環境を整備したい」と意気込みを語った。

 NTTのあり方以外にも,報告書案で踏み込んだ論点は複数ある。NHKの国際放送やNHKアーカイブなどがその例。国際放送は子会社に切り出し,民間からの出資を受け入れるべきというした。また,NHKの番組アーカイブはブロードバンド上で有料で提供すべきだとした。さらには,放送事業者の番組制作部門と伝送部門を分離する「ハード・ソフト分離」とも読める内容が複数追記された。

 次回は6月6日で最終会合となる。NTT改革を含め,積み残した議論に結論を出し,最終報告書を取りまとめる予定だ。