日立製作所は5月31日,システム運用管理ソフト群「JP1」の新バージョン,「Version 8」を発表した。最大のポイントは,運用管理の自動化に向けた機能を用意したこと。システムの異常検知から対策の実行に至る一連のプロセスをルールとして記述し,実行できる。出荷は6月30日(関連記事: 「SOAと日本版SOX法への対応を強化」、日立がJP1を一新)。

 ルールの処理を担うのが,JP1を構成するモジュールの一つである「Rule Operation」。JP1の導入時に,ユーザー企業の業務やシステムの状況を考慮しながら,監視→確認→判断→対処といった運用管理業務の詳細なプロセスをルールとして設定。「これにより,システムのサービス品質を維持できる」(中村孝男ソフトウェア事業部長)。

 記者発表会ではWebチケット予約システムを例に,Rule Operationの利用シーンを説明した。サービスのレスポンスが低下したことを把握し(監視),アクセス状況やWebサーバーおよびデータベース・サーバーの稼働状況を確認(確認)。業務の重要度を考慮しながら対策を選択し(判断),アクセス制限やデータベースのメンテナンス,サーバーの処理能力状況といった対策を実行する(対処)。

 ルールとしては例えば,「レスポンスが30%低下したら障害と判断する」,「対処の一つとして100ユーザー以上は受け付けないようにする」といった形で登録していく。データベースのメンテナンスなど即時に実行できない対処については,JP1のモジュールの一つ「Planning Operation」を使うことで,スケジュールの設定や実行が可能になる。

 「これまでシステム運用管理の現場では,プロセスのうち確認や判断については属人的な要素が大きかった。システム担当者の経験則や運用手順書に沿って,人手で対処するしかなかった。ルールの機能により,一歩進んだ運用管理のあり方を提供したい」とJP1開発責任者の石井武夫システム管理ソフトウェア本部システム管理ソフト設計部長は説明する。

 ルール関連の機能を用意した狙いはほかにもある。石井部長は「運用管理業務の可視化を促すこと」と説明する。「運用管理業務のプロセスをルールとして可視化すると,ユーザー企業はそれをたたき台にして,さらに一段上の運用管理業務のあり方を考えられようになる。JP1の新版が運用管理業務の改善の一助となってほしい」(石井部長)。Rule Operationには,経済産業省が2003年度から3年間実施した「ビジネスグリッドコンピューティングプロジェクト」で開発した成果を盛り込んでいるという。

 Version 8の強化点としてはほかに,Webサーバーを監視する際の項目の詳細化,サービス単位で稼働状況を確認できる機能の追加,内部統制に対するニーズを踏まえたクライアント監視機能の強化など。

◎参考資料
日立製作所JP1 Version 8のニュースリリース。JP1各モジュールの価格はこちらに記載されている。