情報処理推進機構(IPA)は5月30日,インターネットの標準的な通信手順であるTCP/IPに関する既知の脆弱性などをまとめた文書を公開した。文書は,TCP/IPを実装するソフトウエアの開発者や運用者に向けたもの。同文書を参考にしてもらうことで,インターネットに接続する機器やソフトウエアのセキュリティ向上を図る。

 文書は,TCP/IP(ICMPやARPを含む)にかかわる既知の脆弱性(セキュリティ上の弱点)に関して調査した結果をまとめたものとされている。調査を実施したのはセキュリティ・ベンダーのラック。具体的には,以下のような脆弱性(問題)の詳細と,それぞれに対応するための「実装ガイド」と「運用ガイド」が記載されている。

  1. TCPの初期シーケンス番号予測の問題
  2. TCP接続の強制切断の問題
  3. SYNパケットにサーバー資源が占有される問題 (SYN Flood Attack)
  4. 特別なSYNパケットによりカーネルがハングアップする問題 (LAND Attack)
  5. データを上書きするフラグメント・パケットがフィルタリングをすり抜ける問題 (Overlapping Fragment Attack)
  6. 十分に小さい分割パケットがフィルタリングをすり抜ける問題 (Tiny Fragment Attack)
  7. パケット再構築時にバッファがあふれる問題 (Ping of death)
  8. ICMP Path MTU Discovery機能を利用した通信遅延の問題
  9. ICMPリダイレクトによるサービス応答遅延の問題
  10. ICMPリダイレクトによる送信元詐称の問題
  11. ICMP始点抑制メッセージによる通信遅延の問題
  12. ICMPヘッダーでカプセル化されたパケットがファイアウオールを通過する問題 (ICMPトンネリング)
  13. ICMPエラーによりTCP接続が切断される問題
  14. ICMP Echoリクエストによる帯域枯渇の問題 (Smurf Attack)
  15. フラグメント・パケットの再構築時にシステムがクラッシュする問題 (Teardrop Attack)
  16. パケット再構築によりメモリ資源が枯渇される問題 (Rose Attack)
  17. IP経路制御オプションが検査されていない問題 (IP Source Routing攻撃)
  18. ARPテーブルが汚染される問題
  19. ARPテーブルが不正なエントリで埋め尽くされる問題

 文書はPDFファイルで128ページ。IPAのWebページからダウンロードできる。10ページ程度の抜粋版(PDFファイル)も用意している。

◎参考資料
プレス発表「TCP/IPに係る既知のぜい弱性に関する調査報告書」の公表について
TCP/IPに係る既知の脆弱性に関する調査