文化庁「文化審議会著作権分科会法制度問題小委員会」の第4回会合
文化庁「文化審議会著作権分科会法制度問題小委員会」の第4回会合
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 文化庁は5月29日,「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会」の第4回会合を開催した(写真)。IPマルチキャストを利用した放送サービス(電気通信役務利用放送)は放送の同時再送信を行う場合のみについて,著作権法上では有線放送と同等に位置付ける方針を明らかにした。

 文化庁は今回の会合で報告書の骨子案を提示,「著作物の利用形態はIPマルチキャストと有線放送はほぼ同様」(文化庁著作権課)との見解を示した。これまで著作権法上では,IPマルチキャストは有線放送ではなく「公衆自動送信」と位置付けられてきた。だが,今回の見解により,放送の再送信を行う際に限っては,有線放送として扱われることになる。

 公衆自動送信と有線放送では著作隣接権の扱いが異なる。音楽の例では,著作権は作曲者・作詞者が,著作隣接権はレコード会社や演奏者が保有する権利。放送の同時再送信を有線放送で行う場合,有線放送事業者は著作権者から許諾を得ればよい。しかし公衆自動送信では,著作権と著作隣接権の両方の権利者の事前許諾が必要となる。著作隣接権の処理まで必要となっては,地上デジタル放送の再送信の実現は難しいという通信事業者などの主張が認められたことになる。

 ただし今回,認められることとなったのは,放送の再送信のみ。オリジナルのコンテンツを調達するなどして行う「自主放送」でのIPマルチキャストの扱いは,今回の報告書では結論を見送った。ぷららネットワークスの「4th Media」やソフトバンクの「BBTV」が提供中の多チャンネル放送は,今後も著作隣接権者からの事前許諾が必要となる。

 地上デジタル放送のIPマルチキャストによる同時再送信は,2006年内にも試験放送が始まる。文化庁は「地上デジタル方針の同時再送信部分については緊急の対応が必要だが,自主放送に関してはさらなる議論が必要」と判断した。自主放送におけるIPマルチキャストの扱いの見直しの時期については「有識者の意見や世論を見ながら検討したい」(文化庁の甲野正道・著作権課長)とするにとどまった。

 6月7日の次回会合では,報告書案の取りまとめを行う見通し。その後,6月20日の小委員会の親組織である著作権分科会で報告書案を議論する。パブリック・コメントなどを経て,早ければ今秋の臨時国会で著作権法が改正される可能性もある。

●日経コミュニケーション編集部より 記事掲載時には再放送が可能となるコンテンツは「地上デジタル放送」と表現としておりましたが,「放送」全般が可能なため,記述を修正しました。2006.6.2