東京地下鉄情報システム部IT開発推進課の伊藤修司・課長(右)と亀田恵美・副主任
東京地下鉄情報システム部IT開発推進課の伊藤修司・課長(右)と亀田恵美・副主任
[画像のクリックで拡大表示]
 東京地下鉄(東京メトロ、東京・台東)は2006年4月から、新しい基幹情報システム「M’ips(Metro Integration Processing System)」を稼働させた。独SAP社のERP(統合基幹業務)パッケージ「mySAP ERP」を採用。経理や購買などの業務を効率化しつつ、経営管理基盤を強化する。

 民営鉄道最大手である東京メトロの旅客運輸収入は2740億8800万円(2006年3月期)で、阪神電気鉄道の10倍以上という規模だが、株式の上場はしていない。地下鉄建設による投資負担が一段落する2007年度より先の株式上場を目指しているが、決算を半期ごとにしか出せないなど、上場企業としての経営管理体制が未整備だった。

 「従来は社内の情報システムが部門ごとにバラバラに作られており、決算の早期化などを進めるうえで問題があった」(情報システム部IT開発推進課の伊藤修司・課長)。新システムでは、経理・財務や購買、在庫管理、工事管理、資産管理などの業務処理をERPに統合。従来は、鉄道車両部品などの在庫情報を担当部門と経理部門の両方で入力するなど重複業務が多かったが、データを連動させることで重複を解消した。さらに、「固定資産の振り替え」など各種業務のサイクルを半期ごとから月ごとに切り替え、月次決算を約5日間で出せる体制を整えた。

 JR系など他の鉄道会社で実績があるSAPのERPパッケージと、鉄道業固有の標準業務要件を組み込んだアビーム コンサルティング(東京・千代田)の「鉄道業会計ソリューション」を採用した。役員レベルの「アドオン管理委員会」を設けて標準以外の追加開発を抑制し、開発開始から1年弱という短期で稼働にこぎつけた。2005年度分の投資額は約30億円。さらにシステム拡充のための投資を予定している。

 ERPとは別に、2006年10月までに文書管理システムも稼働させる。東京地下鉄は、1925年に最初の地下鉄建設を始めて以来の約150万件もの建設図面を保有する。建設時の図面を保守工事に使うようなときに、従来は受け渡しに手間がかかっていた。新システムでは、CAD(コンピュータによる設計)データの形式を統一するなどして一元管理し、各部門が図面を二次利用しやすいようにする。