「東京フードシアター5+1」の前に立つ廣常啓一社長
「東京フードシアター5+1」の前に立つ廣常啓一社長
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 今年3月にオープンした秋葉原UDXビル内の産官学連携研究施設「先端ナレッジフィールド」。3次元の映像やビルの屋上での農業などユニークなテーマに取り組む研究施設として注目を集めている。その一角にあるレストラン「東京フードシアター5+1」も、実は実証実験の施設だ。

 テーマは「レストランのIT化」、具体的にはオール電化の厨房機器のネットーワーク化である。機器の運用履歴や加熱時間と温度などを蓄積し、調理方法をカメラで撮影し、1つの料理を作る過程を丸ごとデジタルテータにする。

 「音楽配信が普及したり、iPodがヒットしたのは音楽ソフトがデジタルデータ化されてネットワーク上でやり取りされるようになったからだ。料理人のレシピもデジタルデータにしてしまい、著作権を知的財産として保護にできないかと考えている」と話すのは先端ナレッジフィールドを運営する新産業文化創出研究所(東京・千代田)の廣常啓一社長。3月以来、レストランとしての営業のかたわらでデータの蓄積は進んでいるという。

 レストランの厨房機器や空調機器のほとんどが、それぞれの業界大手の寄付による最新鋭設備だ。参加企業は数十社に及び、レストランで使われる食材にも食品メーカーからの寄付が多い。ITレストランに寄せる期待の大きさがうかがえる。使用する厨房機器はすべてネットワークで結ばれている。将来、有名料理人のレシピ・データがレストランから家庭用の厨房機器に配信される可能性もあるという。

 こうした取り組み以外に、レストラン経営そのものについての実験も行われている。その1つがPDA(携帯情報端末)を使った接客サービスの強化だ。ウェイターやウェイトレスが注文をとる際にPDAを使い、「仕入れから在庫、接客までを結ぶことができたら、食材の在庫量に応じて接客時に料理を値引きして提供し、売れ残りを減らすこともできる」(廣常社長)。レストラン経営におけるサプライチェーン・マネジメントの実現だ。現在PDAに蓄積する料理データの作成中という。近い将来に実現しそうだ。