基調講演を行った市川市の情報政策監(CIO)・井堀幹夫氏
基調講演を行った市川市の情報政策監(CIO)・井堀幹夫氏
[画像のクリックで拡大表示]
会場には自治体職員を中心に多数の出席者が訪れた
会場には自治体職員を中心に多数の出席者が訪れた
[画像のクリックで拡大表示]

 日経パソコンと日経BPガバメントテクノロジーは2006年5月26日、自治体職員を対象とした行政情報化に関するセミナー「全国電子自治体会議」を都内で開催した。会議のテーマは「CIO組織によるITを活用した安心・安全な行政サービスの推進 ~セキュリティガバナンスから防災システムまで」。

 午前10時からの冒頭の基調講演では、千葉県市川市の情報政策監(CIO)・井堀幹夫氏が、「CIO組織による安心・安全な行政サービスの推進」をテーマに、安心・安全に対するCIOの役割について紹介した。

 井堀氏はCIOの役割として、IT関連部門にとどまることなく、行政の経営にも関わっていく視点を持つことが必要だと述べた。市川市ではCIOを特定の部や課に置かず、市長、助役の下に置いている。各部門の政策的事業や戦略的事業の方向性を決定する全庁的な行政経営会議にも積極的に関与している。

 CIOの役割として、情報システムの管理、構造、調達の最適化に関するガイドラインを明確にしておく必要性についても述べた。市川市では1974年に大型コンピューターを導入した。その際は、情報システムをどのように管理し、運用すればよいのかという具体的な基準がなかった。そこから情報システムを管理するうえでの業務プロセスと手法を標準化し、スキルのない職員でも基準に照らし合わせて運用管理を最適化できるようにした。

 一方、個人情報保護などの情報セキュリティ対策においては、ウイルス対策だけではなく、一人ひとりの職員の意識がポイントになると強調した。情報セキュリティに対する職員の意識を高めるために、市川市では情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を各部門で積極的に取得している。2006年度は図書館や環境部門などの業務についても取得する予定で、これにより市役所の全部門が認証取得となる。

 職員に対するアンケートでは、特に情報セキュリティ対策を実施していない職場では48.5%が情報セキュリティに対して不安や危機感を感じていなかったのに比べて、ISMSの取得などの情報セキュリティ対策を積極的に実施している職場では、92.8%が不安や危機感を感じているという結果が出た。このことから、情報セキュリティ対策は、職員の危機意識を確実に高める点で大きな効果があるとした。

 犯罪や災害の被害を防ぐうえで、行政だけでなく市民や地域と一体になったシステムの一例として「いちかわ安心e・ネット」について紹介した。これは市川市民なら誰でも携帯電話などを使って安心安全に関する情報を発信でき、発信情報を地図上に載せていくというシステムだ。現在、3000人の登録者が随時情報を発信している。ほかにもQRコードを使った防犯パトロールや、地域通貨を使って地域のつながりを深めた事例について説明した。

 最後に今後の課題として、適切な情報セキュリティレベルを客観的に評価するために全国共通の評価基準を作ることと、住む場所が変わっても共通利用できる全国標準危機管理システムを構築する必要があるとした。