地上デジタル放送をIPマルチキャスト方式による放送サービスで再送信する際の枠組み作りが佳境を迎えている。竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」は,先ごろまとめた報告書の骨子案の中で「IPマルチキャスト放送の著作権法上の扱いを従来の放送と同等にするよう速やかに対応すべき」とし,権利処理のルール整備に積極的な姿勢を見せた。また,著作権を管轄する文化庁の文化審議会でも,こうした動きに配慮しながら2006年6月中にその著作権法上の扱いについて一定の結論をまとめる方針である。

 一方,放送業界からの強い反発を招きそうなのが,IPマルチキャスト放送で地上デジタル放送を再送信を同意する枠組みについて,通信・放送懇談会が「IPマルチキャストによる再送信には,基本的には地域制限をかけるべきではない」とした点である。懇談会座長の松原聡東洋大学教授は当初から,「IP技術を使うのに,送信できる範囲に制限を設けるのは時代に逆行している」との見解を示しており,その考えが反映された格好である。だがこれに対して地上波放送業界は,「地方発の情報提供の機会を失うことになり,また,地方局の経営に与える影響が大きい」などと反発している(詳細は日経ニューメディア2006年5月29日号に掲載)。