野村総合研究所(NRI)は埼玉県から委託を受けた自動車税の収納代行業務で、5人分の個人情報を紛失した。個人情報としては、氏名、住所、郵便番号、ナンバー・プレートの番号、税額などが含まれる。NRIと埼玉県は3月末に紛失の事実を把握し、4月に調査。5月に当事者への謝罪を済ませ、5月23日に公表していた。

 NRIは、住民がコンビニエンス・ストアで自動車税を納付し、その収納金とデータを埼玉県に受け渡す業務を受託していた。今回は、システムのテスト作業で問題が起こった。毎年同時期のテストは架空のデータで実施していたが、「今回は滞納を管理する新システムを稼働させたため、実際の住民データをサンプルとして利用していた」(埼玉県総務部税務課)という。

 そして、NRIはテストのため埼玉県から手渡された納付書を、コンビニエンス・ストア運営会社に郵送する過程で紛失してしまった。10社に送ったうち、1社に対する5人分のデータの行方が分からなくなった。

 今回紛失した個人情報は5人分と件数としては少ない。しかし、埼玉県とNRIの不十分な管理姿勢が明らかになった。一つは、納付書のサンプルには、実在する住民データが記載されており、文字のマスキングもされていなかったこと。もう一つは、NRIが納付書を配達記録のない通常郵便で送ってしまったことだ。

 NRIは「現時点で不正利用の事実は確認されていないが、ご迷惑をおかけした関係者には深くお詫びする。従来、個人情報は厳格に管理しているが、今回の件を受けて本当にサンプル・データであるかどうかの確認を強化する」(広報部)、埼玉県は「職員指導を徹底したうえで、テストではできるだけ架空のデータを利用する。本物のデータを使う場合は、個人を特定する情報の塗りつぶしを徹底する」(総務部税務課)とそれぞれコメントしている。

【訂正】野村総研の当初の説明に事実と異なる部分があり、第4段落にあった以下の一文を削除いたしました。
「これをNRIは架空のデータと解釈し、埼玉県に確認しなかった」