東京工業大学がインターネット上で無償で講義ノートやシラバス(一学期間の教授細目)を公開する「オープンコースウェア(OCW)」と呼ばれる取り組みを強化している。OCWは2001年にマサチューセッツ工科大学で始められた。講義ノートやシラバスなどの情報を無償で教育資源として提供することで学習機会を広く提供していくことが目的である。

 日本では昨年5月に、大阪大学、慶応義塾大学、東京工業大学、東京大学、早稲田大学の6校によって日本OCW連絡会(現日本オープンコースウェア・コンソーシアム、JOCW)が設立された。同年12月には名古屋大学が、今年4月には九州大学と北海道大学がOCWを開始している。各大学がそれぞれOCWサイトを立ち上げ、一部の教員がそこで講義情報を公開している。

 開始からちょうど1年たつものの、各大学のOCWサイトでは情報を公開している講義数はなかなか伸びていない。そのなかで飛躍的に講義数を伸ばしているのが、東京工業大学だ。OCW開始時の52講義から136にまで増えている。JOCW加盟大学がネットで公開している講義数は350強であることから4割近くを東工大が占める。この背景には参加教員を増やすための仕掛けにある。

 東工大の真島豊助教授は「MITはOCWサイトを運営するスタッフだけで30人を抱えているが、うちの大学では5人にすぎない。各教員が自らの意思で更新していくような仕掛けを作った」という。ほかの大学では講義ノートをいったん職員に提出し加工したうえで公開するので手間がかかる。動画を公開する大学もあるが、その場合はこまめに更新することはさらに難しくなる。東工大では、PDF形式で講義ノートを公開しているが、アップデートにかかる時間は「10分もかからない」(真島助教授)という。

 東工大では今年4月にサイトをリニューアルし、アクセス数によるランキングと最新アップデートの順番で全講義を確認する機能を付けたことで参加教員にも張り合いができた。アンケートを受け付ける機能を備えているため、教員は閲覧者から講義についての意見を聞くことができる。「社会人や留学生の入学希望者を増やすことを目的にしているわけではない」としながらも、東工大では現在、1日のページビューが6000を超し、ブランド力向上につながっているのは間違いない。真島助教授によると「全世界に講義ノートを公開することで教員自身の意識改革になっている」とその効果を説く。

 サイトオープン時から協力してきたNRIウェブランディア(東京・千代田)の担当者は「真島先生らの地道な働きかけで参加教員の数が少しずつ増えてきたのが理由」と話す。JOCWでは今年9月に参加大学を増やすべく会員大学の募集を予定している。

参考
・東京工業大学オープンコースウェア
・日本OCW連絡会