竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」(座長:松原聡・東洋大学教授)は2006年5月16日に報告書案を公表した。それは,民放関係者が胸をなで下ろす内容であった。民放関係者にとり,竹中総務相といえばかつて政府のIT戦略本部が「ハード・ソフト分離論」を打ち出した時のIT担当相との印象が強く残る。

 2001年12月のことである。当時,IT戦略本部のIT関連規制改革専門調査会が,放送事業を放送設備(ハード)部門と番組制作(ソフト)部門に分けて規制する新たな法体系案を発表した。

 これに対して民放業界は,政府が地上波放送事業者をハード部門とソフト部門に分割しようとしていると判断。業界を挙げて大反対し,取り下げさせた経緯がある。それから4年後の2005年12月に竹中総務相が私的懇談会を立ち上げることを明らかにした際に,多くの民放関係者の頭をよぎったのがハード・ソフト分離論の再燃であった(詳細は日経ニューメディア2006年5月22日号に掲載)。