富士通の黒川博昭社長
富士通の黒川博昭社長
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 「昨年11月1日に発生した東京証券取引所のシステム障害を、忘れることができない」。富士通の黒川博昭社長(写真)は5月18日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催している「富士通フォーラム2006」の基調講演で、こう述べた。「11月1日を富士通の再出発点と位置づけ、顧客システムの安定運用に向けて全社一丸で取り組んでいく」と宣言した。

 昨年11月1日、富士通の作業ミスで東証の売買システムが4時間以上停止した。黒川社長は、「ITが経営に与えるインパクトの大きさを改めて痛感した」と話した。この障害を機に、富士通は金融系や公共系など、同社が手がける200以上の大規模システムの運用業務に問題がないか緊急確認している。その結果、運用手順を明文化していない、特定の担当者しか知らない作業がある、作業記録が残っていない、緊急時の対応手順がない、といった早急に改善すべき問題が見つかったという。現在、システム運用業務の抜本的な見直しを全社的に推進している最中だ。

 運用業務の改善に先駆け、富士通は「予算オーバー」や「稼働延期」など、システム開発プロジェクトの失敗を減らすための改善活動に取り組んできた。その結果、「2005年度の失敗プロジェクトの数は、前年比で75%削減できた」(黒川社長)。システム障害と失敗プロジェクトの両方を撲滅させることにより、顧客の期待に応えることを目指す。

 黒川社長は、「新システムを提案したり、コンサルティング・サービスを提供したりする前に、システム障害や失敗プロジェクトを撲滅させるのが第一。そのために愚直な取り組みを続けていく」と説明した。