7月からCCCグループ傘下に入るすみやの「メディアナウ三島店」
7月からCCCグループ傘下に入るすみやの「メディアナウ三島店」
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4月15日にオープンした「TSUTAYA札幌琴似店」。店内にスターバックスコーヒーがあり、CD・DVDのレンタルと販売だけでなく、書籍の販売も手がける超大型店。同様の形態である「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI店」のおよそ2.5倍のフロア面積を持つ
4月15日にオープンした「TSUTAYA札幌琴似店」。店内にスターバックスコーヒーがあり、CD・DVDのレンタルと販売だけでなく、書籍の販売も手がける超大型店。同様の形態である「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI店」のおよそ2.5倍のフロア面積を持つ
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 CDやDVDの販売・レンタル最大手のTSUTAYA(東京・渋谷区)は、静岡県を中心に関東・東海地区で55店舗のCD・DVD販売直営店を運営するすみやを買収する。6月29日に開催するすみやの株主総会で承認決議を経て、川辺哲社長を含む経営陣はすべて退任。TSUTAYAから取締役を派遣する。すみやブランドは継続するが、TSUTAYAがIT(情報技術)や商品調達機能、店舗運営のノウハウを提供することによって、すみやはCD・DVDの販売を強化する。

 ここ数年業績が低迷していたすみやは、7月14日に第三者割当増資を実施、TSUTAYAはこれを4億9500万円で引き受け、議決権比率69.03%で筆頭株主となる。同時に、すみやは静岡銀行に対して優先株式を発行し、20億円の資金を調達する。

 今回の買収は、持ち株会社カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とTSUTAYAの社長を兼務する増田宗昭氏の「プラットフォーム戦略」の一環だ。20年以上にわたるTSUTAYA事業で築き上げた商品データベースなどのIT、ブランド力、人材、店舗・顧客基盤の4つの武器をグループ内で効果的に共有し、複数の事業を組み合わせることで消費者に新たなライフスタイルを提案する戦略である。

 増田社長は今年3月、1983年の創業以来追い求めてきた「世界一の企画会社になる」という夢を実現するため、TSUTAYAを分社してCCCを持ち株会社に移行している。CCC傘下にはこのほか、カード事業を展開するTカード&マーケティング、ネット通販事業を扱うツタヤオンライン、映像ソフトの調達などを手がけるレントラックジャパンなどがある。「ブランドを作らないと、企画会社としての信頼は得られない」と考えた増田社長にとって、TSUTAYAは名刺代わりとなる大切な“作品”ではあるが、TSUTAYA事業のためだけにCCCを作ったわけではなかった。

 すみやの買収によって、CCCグループでCD・DVD販売を手がける店は1181店舗になる。売上高1650億円は国内最大である。内訳は、TSUTAYA店が882店舗、ヴァージン・メガストア店が19店舗、新星堂店が225店舗、すみや店が55店舗。また、CD・DVDレンタルだけ手がける店も含めるとTSUTAYAだけで1273店舗あり、会員数は1871万人に上る(今年3月末時点)。

 TSUTAYAとすみやは今後、CDやDVDはもちろん書籍も含めた各種エンタテインメントソフトの販売とレンタルを手がけるライフスタイル提案型の新店舗の開発も、共同で推進する計画。増田社長は現在、本格的なネット社会になっても足を運んでもらえる店作りを模索している。例えば4月15日、1フロアが1000坪もある超大型の「TSUTAYA札幌琴似店」を札幌市内にオープンさせた。深夜2時まで明かりの灯る店内にはスターバックスコーヒーを誘致。書籍コーナーだけで350坪あり、ソファに座りながら無料で販売用の本をゆったりと読むことができる。

 増田社長は今年4月、新入社員の前で「何がリアルで、何がバーチャルか」という話をした。「現実にまだそうなっていなくても、ボクが『こうなりたい』と言っていることがリアル。戦の時なら、武将の首をはねるというビジョンが大切なんだ」と熱弁をふるった。そこに込めた思いは、現状に甘んずることなく、ビジョンをどう実現するのか考えて常に行動してほしいということ。CCCは業績が好調なだけに、社員は現状に満足しがち。ビジョンをみんなが本気で受け継いでいかないと企画会社としての成長は難しい、と危機感を募らせている。