著作権使用料徴収額の主な内訳(JASRACの資料を基に日経パソコンが作成)
著作権使用料徴収額の主な内訳(JASRACの資料を基に日経パソコンが作成)
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JASRAC 常務理事の加藤衛氏
JASRAC 常務理事の加藤衛氏
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 日本音楽著作権協会(JASRAC)は2006年5月17日の定例会見で、2005年度の著作権使用料等の徴収額が1136億円(対前年度比2.5%増)と、前年度に引き続き過去最高を記録したことを発表した。放送やDVDの映像ソフト販売が好調に推移したことが、徴収額を下支えした。併せて同協会は、「ポッドキャスティング」にかかわる音楽利用申請の手続きを簡素化することなどを発表した。

放送やDVDが伸長、着メロは急減

 放送からの徴収額は259億円(対前年度比15.5%増)と2けたの伸びを示した。放送事業者との協議により、著作権使用料の徴収料率を改定したことが奏功した。VTRやDVDなどの映像ソフトをまとめた「ビデオグラム」の徴収額は147億円(同5.6%増)。テレビドラマをDVDとしてセット販売する、いわゆるDVDボックスの発売が相次いだことなどが背景にある。

 一方、携帯電話機やパソコンでの音楽配信をまとめた「インタラクティブ配信」は92億円(同0.7%減)と横ばい。ここ数年、徴収額増加をけん引してきた着信メロディーが、同21.5%減と縮小に転じたことが影響している。「着うた」に代表される「オリジナル音源着信音」は同110.1%増、「iTunes Music Store」をはじめとするパソコンでの音楽配信や「着うたフル」を含む「その他音楽配信」は同113.6%増とそれぞれ大幅に躍進したが、いずれも金額ベースでは10億~20億円程度とまだ市場が小さく、着信メロディーの減少を補いきれなかった。

 音楽CDの減少も続く。2005年度は260億円(同1.7%減)となり、徴収額全体に占める音楽CDの構成比は、2001年度からの4年間で32.3%から22.9%まで縮小した。「日本レコード協会(RIAJ)によると、2006年1月~3月の音楽CD販売は対前年同期比6%増と7年ぶりにプラスを記録したが、算出基準の違いなどもあり、JASRACとしての同期間の徴収額は横ばいになりそう。音楽CDの販売が下げ止まるかどうかは、今後の状況を見てみないと分からない」(同協会 常務理事の泉川昇樹氏)。

 実は、同協会は2005年度予算作成の段階で、市場の推移を厳しく見積もっており、徴収額が1082億円と減少に転じると見込んでいた。結果として2005年度は予想が良い方向に外れたわけだが、同協会 常務理事の加藤衛氏は、「全体の数字としては一見良さそうに見えるが、安心してはいない。着信メロディー市場は縮小に向かい始めているし、放送も2005年度は好調だったが、これがいつまで持つか分からない」と引き続き慎重な見方を示した。

ポッドキャストの申請手続きを簡素化、今夏にも実施

 同協会はこの日の会見で、「ポッドキャスティング」の番組内における音楽利用の申請手続きを見直す意向を表明した。現在は番組内で使用する曲ごとに申請手続きをする必要があったが、これを番組単位の申請で済むよう手続きを簡素化する。早ければ2006年6月~7月にも実施する予定。

 会見では、文化審議会 著作権分科会 私的録音録画小委員会で審議を進めている、私的録音録画補償金の見直し(関連記事)についても言及した。2005年度の小委員会で、ハードディスクやフラッシュメモリーを記録媒体として用いた携帯型音楽プレーヤーの対象機器指定が認められず、2007年度末まで結論が先送りされたことについては、「これらの機器はMDプレーヤーなど従来の機器を代替する存在として存在感を増してきている。しかもこれらの機器では、明らかに私的録音がされている。にもかかわらず、対象機器としての指定が先送りされたのは残念だ」(泉川氏)と述べた。

 2006年度~2007年度の小委員会で予定している、私的録音録画補償金制度そのものの抜本見直しについては、「録音/録画専用機器だけでなく、パソコンなどの汎用機器における私的録音の問題に切り込んでもらいたい。そういう意味で今回の抜本見直しは当然のことと言えるし、歓迎している」(泉川氏)と、従来の主張を繰り返した。