富士通は5月17日、企業の内部統制を支援するサービスおよび製品群「内部統制強化支援ソリューション」の提供を開始した。同社が現在提供している製品やサービスを内部統制支援という枠組みで体系化した上で、自社のノウハウを生かしたコンサルティングや教育・研修のサービスを追加したもの。「日本版SOX法(日本版企業改革法)が求める財務報告の信頼性確保はもちろん、ビジネス・プロセスの見える化や改革によって顧客企業を『強くする』ことを支援したい」と、平田宏通 経営執行役常務は話す。

 日立製作所やNEC、NTTデータなど内部統制サービスで先行する大手のほとんどは、自社あるいはグループで米SOX法対策プロジェクトを実施した経験を持つ。各社または親会社が米国で上場しているからだ。ここで得た経験やノウハウを、サービスの売り物にしている。

 米国で上場していない富士通は、こうした経験を持たない。それでも平田経営執行役常務は、「先行する他社に比べ、そん色ないサービスを提供できるとの自負は持っている」と自信をみせる。というのも、昨年から富士通グループ72社で進めている内部統制プロジェクト「PROJECT EAGLE」を進めているのに加えて、米国上場企業のグループ会社(国内14社、海外30社)に対して文書化支援や検証支援などのSOX法対応コンサルティングを実施した経験やノウハウを持つからだ。今年2月にFujitsu Consultingが買収したリスク・マネジメント専門のコンサルティング会社であるカナダGIMの持つ経験も生かせるという。

 特にみずから進めているPROJECT EAGLEで得たノウハウが、他社との差異化要因になると、同社はみている。「バーディではなく、あえてハードルの高い“イーグル”を狙ったプロジェクト」と、THE FUJITSU Way推進本部本部長代理を務める池本守正氏は表現する。昨年10月にスタートし、参加人数が延べ300人、関連人数で1000人を超えるこのプロジェクトでは、財務報告の信頼性確保に加えて、業務プロセスの改革を大きな目的として掲げている。「プロセス改革に取り組んだノウハウが、当社のサービスにとって大きな武器になる」(平田経営執行役常務)。

 今回、同社が提供する内部統制強化支援ソリューションは、(1)内部統制強化コンサルティングサービス、(2)内部統制ライフサイクルマネージメントソリューション for SOX、(3)業務統制支援ソリューション、(4)IT全般統制支援ソリューション、(5)教育・研修サービス、で構成する。(1)はテンプレート(ひな型)を利用して、文書化や内部統制の有効性評価、不備改善などを実施する。(2)から(4)は、文書化支援ソフトのValuevision、ERPパッケージ(統合業務パッケージ)のGLOVIA、運用管理ソフトのSystemwalkerなど同社製品を利用したサービス。(5)は基礎から応用までをeラーニングや集合研修で支援する。

価格は、(1)で300万円から、(5)は一人あたり5万円から。現状では、このコンサルティング・サービスの専任要員は80人だが、2007年までに200人に増やす。2008年度に200億円規模のビジネスを目指す。ちなみにPROJECT EAGLEは今年4月から順次本格展開を進めており、来年9月にひと通りのメドをつける予定という。