写真1 「通信と放送の在り方に関する懇談会」の第12回会合であいさつする座長の松原聡東洋大学教授。竹中平蔵総務大臣は,会合開始1時間後に到着した。
写真1 「通信と放送の在り方に関する懇談会」の第12回会合であいさつする座長の松原聡東洋大学教授。竹中平蔵総務大臣は,会合開始1時間後に到着した。
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写真2 懇談会終了後の会見で報告する竹中総務大臣と松原座長。
写真2 懇談会終了後の会見で報告する竹中総務大臣と松原座長。
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 竹中平蔵総務大臣が主催する「通信と放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇)は5月16日,第12回会合を開催した(写真1)。今回は,座長を務める松原聡東洋大学教授が,報告書の骨子案を提示。これを基に議論を展開した。だが前回会合で明らかにした,NTT東西地域会社のアクセス部門を分離する方針についての結論は出なかった(関連記事)。

 懇談会終了後の会見には,竹中総務大臣と松原座長がそろって登場(写真2)。NTTのあり方の議論に多くの時間を割いたことを明らかにした。しかし具体的な議論の内容に関しては,「NTTの問題点が経営形態とアクセス部門のボトルネック性にあることを構成員で再度確認した」(松原座長)と述べるにとどまった。

 松原座長は「1999年の再編時に選択した持ち株会社の配下に事業会社を置く組織形態は電話の時代の発想。IP化が進む現状にはふさわしくない」と発言。NTTの組織形態に見直しが必要なことを改めて強調した。また,「組織改変は(デジタル化とブロードバンドが全国に浸透する)2010年代初頭までに完了しないと,日本の通信と放送の発展にとってマイナスになる」という考えも明らかにした。
 
 アクセス部門のボトルネック性については,NTT東西地域会社のDSLと光アクセスのシェアを引き合いに出し,「DSLでは5割を大きく割り込んでいるのに光アクセスは6割に上る。メタルから光ファイバに移行するとボトルネック性は強まる」(松原座長)という見解を示した。ただしアクセス部門の分離方法に関して,機能分離にとどまるのか,さらに踏み込んで別会社に分離する,もしくはNTTの持ち株会社を廃止しNTTの事業部門ごとに資本分離するのかまでは結論が出ずに終わった。

 NTTのあり方以外では,NHKのあり方にも時間を割いて議論したという。国際放送の強化と「NHKアーカイブス」のコンテンツをブロードバンド配信することでは構成員が合意した。NHKアーカイブスとは,NHKの過去に放送した45万本の番組と125万項目のニュース・クリップを保存した施設のこと。NHKの組織のあり方やチャンネル数の削減については決着していない。

 当初は今回の会合が最終会合になると見られていたが,NTTのあり方を含め複数の論点が次回持ち越しとなった。次回会合の日時は未定だという。しかし,懇談会の結論を政府の経済財政運営の基本方針である「骨太方針」に盛り込むことを考慮すれば,5月中の取りまとめが濃厚だ。