マイクロソフトは5月16日,Windows Vista以降で実施される「JIS2004文字セット」への移行計画を明らかにした。文字セットの変更に伴い,新たに漢字約900文字などが表示可能になる一方で,122文字の漢字の字形が変わる。そのためマイクロソフトは移行措置として,Windows Vistaのユーザーに対して,122文字を古い字形で表示できる「旧JIS90互換MS書体」を提供する。マイクロソフトディベロップメントの阿南康宏プログラムマネージャーは「Windows VistaとWindows 2000/XPで字形を合わせたいユーザーに対応した」と説明している。

 現在のWindows(Windows 98/Me/NT 4.0/2000/XP/Server 2003)に搭載されたマイクロソフト製フォント(MS Font,MS明朝やMSゴシックなど)は,「JIS90」規格の例示字体と同じ字体を採用した「バージョン2.3」である(表)。Windows Vistaでは,文字セットが「JIS2004」に変更され,MS Fontも「バージョン3」になる。MS Fontバージョン3では,約900文字の漢字や約200文字の非漢字(英語の発音表記などに用いられる音声記号やアイヌ文字など)が表示可能になる。

 しかし,JIS90をベースにするMS Fontバージョン2.3と,JIS2004をベースにするMS Fontバージョン3.0では,122文字の字形が異なる。そこでマイクロソフトはWindows Vistaのユーザーに対して,同社のWebサイト「ダウンロード・センター」で,122文字に関しては古い字体のまま表示できるMS Font「バージョン2.5」を提供する。Windows Vistaのユーザーはバージョン2.5のフォントをインストールすれば,従来のWindowsと同じ字形を使用できる。

 将来的にマイクロソフトは,MS Fontをバージョン3.2に移行する計画でもある。MS Fontバージョン3.2は,「OpenType」(米Microsoftと米Adobe Systemsが共同開発したフォント形式)のフォントになる。OpenTypeに対応したアプリケーションやWinFX(Windows Presentation Foundation)対応アプリケーションでは,OpenTypeの機能によって,JIS90ベースの字形とJIS2004ベースの字形の両方が使えるようになる。MS Fontバージョン3.2は,「Microsoft Update」のWebサイトでWindows XP,Windows Server 2003,Windows Vista,Windows Longhorn Server(開発コード名)に対して無償で配布される。

 Windows Vistaには,MS明朝,MSP明朝,MSゴシック,MSPゴシック,MSUIゴシックに加えて「メイリオ」というOpenTypeならびに「ClearType」に対応したフォントが追加される。ClearTypeは,文字の斜め線部分のギザギザ(ジャギー)を抑制する技術で,Windows XPで採用された。またメイリオは,和文と欧文が混じった文章が美しく見えるように,フォントの基本を正方形にするのではなく,横100%に対して縦を95%として上に詰めた,やや平らな字形を基本としている。

 メイリオは「明瞭」の意味で,英語での表記は「Meiryo」である。カタカナ表記を「メイリオ」にすることを発案したのは,メイリオ・フォントを設計した外部デザイナーの河野英一氏だ。河野氏は「メイリョーとすると,ヨが小さい字になるのが気に入らなかった。またMeiryoを外国人に発音させると,メイリオに聞こえる。このほか4文字のメイリオだと,Windowsの4色のロゴ(赤,緑,青,黄)に上手く収まることも考慮した」と語っている。