放送事業という一本柱から,インターネット事業を加えた二本柱へ――。NHKの事業構造が大きく変わるかもしれない。

 竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」はこのほど,「(NHKの)番組アーカイブをブロードバンド(高速大容量)上で積極的に公開すべき」との方針を打ち出した。インターネットへの本格進出というNHKの長年の悲願が,達成に向けて大きく前進した。

 NHKが埼玉県川口市に放送済みの番組を保管する施設「NHKアーカイブス」を完成させたのが2003年である。インターネットで配信できる体制を整えたうえで,NHKは「アーカイブスに保管した膨大な映像コンテンツを有効活用させてほしい」と総務省に訴えてきた。現在総務省は,NHKが番組をインターネットで配信できる期間を,放送してから約1週間以内に限っている。これでは半世紀にわたって蓄積した膨大な映像コンテンツの多くが死蔵してしまうとNHKは主張した。

 さらに,NHKは放送法で営利事業が認められおらず,番組を有料で配信することができない。逆に言えば,受信料を財源に無料で配信するのであれば現行法でも対応可能なのだが,NHKはこれには触れずに有料配信に強くこだわった。懇談会はまだNHK本体にインターネットへの本格進出を認めるのか,それとも子会社による進出を認めるのかは判断していない。どちらにしても有料での配信を容認する見通しである(詳細は日経ニューメディア2006年5月15日号に掲載)。